看護

看護師が知っておきたいペースメーカーのモードと適応疾患

こんにちはICU看護師のミダ猫です、今回はペースメーカーについての記事を書きました。

 

ペースメーカーとは「心臓に周期的な電気刺激を与えて心拍を正常に保つ装置」です。つまりは洞結節などといった刺激伝導系の代わりとなって心臓へ電気刺激を与える装置です

 

電気刺激が足りないと本来80回/分必要な心拍数が40回/分といったように徐脈となり、めまいや失神などを引き起こします(これをアダムス・ストークス発作と言います)。

 

なのでペースメーカーは基本的に足りない電気刺激を補うため使用されます、つまり徐脈性の不整脈に使用されます

 

この記事では『ペースメーカーのモードの成り立ちや法則』『ペースメーカーの適応疾患』について解説していきたいと思います。

 

ペースメーカーのモードを知る

DDDとかVVIとかいまいちわかりにくいのがモード。

モードを理解するのに必要なお約束を簡単に説明したいと思います。

 

①モードはアルファベット3文字で表す。1番目は刺激・2番目は感知・3番目は反応

心房がA心室はV、心房・心室の両方はD

ペーシングとは心臓に刺激を送ること、センシングとは心臓の刺激を感知すること

抑制はI同期はT抑制と同期の両方はD

この4つはペースメーカー療法を理解する上で必須です。

逆にこれがわかっていないと理解出来ないということになりますので頑張って覚えて下さい。

ペーシングとセンシング

心臓は刺激伝導系の電気刺激で動いています。洞結節から刺激が出て(P波)それが房室結節を通り心室の左脚・右脚へと伝わります(QRS波)。

ペースメーカー・イラスト

https://www.jhf.or.jp/publish/heartnews/vol20.htmlより引用

 

このとき洞結節に異常があり刺激が少なくなると、心室の刺激も少なくなり結果的に身体に必要な血液が送れなくなります

そこでペースメーカーで洞結節の刺激が少ない事を感知(センシング)して、足りない刺激をペースメーカーから洞結節へ刺激ペーシングするということです。

 

抑制と同期

次に抑制と同期ですが、ペースメーカーで刺激を与えていても自身の心臓から刺激が出ることがあります自己波と言います)。

 

自身の刺激を感知した場合、ペーシングを行わず自己波を優先する事を抑制(英語でインヒビット、inhibitのI)するといいます。

自身の刺激があるのにペースメーカーからも刺激をする必要はありません、無駄に電池を消耗するだけなので自己波があるときはペースメーカーから刺激を送らないのは基本です。

 

心房からの自己波を感知→心室へ刺激を送り心臓を動かす、つまり心房の刺激に同期して心室を刺激することを同期(英語でトリガー、triggerのT)すると言います。

同期をしてあげないと心房と心室が好き放題に動いてしまうので、心臓がきれいに収縮するためにはこの同期の機能が必要になります。心房→心室間の電気の伝導障害がある場合に用いられる機能です。

自己波とペーシングが重なるとどうなる?

では抑制せずに自己波があるのにペーシングでも刺激を送るとどうなるのか?頻脈になるのか?と思いますよね、筆者もそう思ってた時期がありました。

 

心筋は特定の電気活動を行っている間にあらたな電気刺激を受けても反応を示さない、これを不応期と呼びます。この不応期があるおかげで、自己の刺激にペースメーカーからの刺激が重なってその刺激は無効化されるわけです。

 

なので結果的に抑制でも同期でも波形としては変わらないです。

ではなぜペースメーカーの設定は抑制が主流なのでしょうか?それは同期だと自己波に同期して刺激を送る分電池の消耗が激しいからです。

 

体内にペースメーカー本体が入っているので交換時期が早くなってしまうのはそれだけ患者さんに負担がかかります。

そういった理由でAAIやVVIといった抑制のモードが普及しています。

 

ちなみに不応期には絶対不応期(どんな刺激にも反応しない)と相対不応期(強い刺激には反応する)があります。

心電図上はQRS波の頂点からT波の頂点あたりは絶対不応期でそこから相対不応期へと移行していきます。

T

http://shindenzunoheya.blog.jp/archives/10705451.htmlより引用

このT波付近で強い刺激を受けると心室細動など致死的不整脈へ移行しやすくなります、この現象をRonTと呼びます。

 

それがペーシングによっておこることをSPIKEonT(スパイクオンT)と呼びます。

 

モード一覧

ペースメーカーのモード一覧です。

刺激(ペーシング) 感知(センシング) 反応様式
A(心房) A(心房) I(抑制)
V(心室) V(心室) T(同期)
D(両方) D(両方) D(両方)

※4番目に運動時に設定心拍数の上限を上げるR(rateresponse)というオプションもあります。

ペースメーカーは心臓の電気を感知して、心臓を刺激する。

アルファベット3文字でモードを表す。刺激・感知・反応の順で表記。

自己波を優先するのが抑制、自己波に合わせて刺激するのが同期。



ペースメーカーのモード設定を知る

まずは下記の4つのモードを覚えて下さい。現場で使うのはほぼこの4つとなります。

①AAI

②VVI

③DDD

④VDD

「ペースメーカー 刺激 感知」の画像検索結果

http://www.med.u-toyama.ac.jp/anesth/text/Case%2048.pdfより引用

①AAI

心房の刺激を感知(Aをセンシング)して、心房へ足りない刺激を送る(Aをペーシングする)モードです。

 

心房から自身の刺激があった場合は、ペースメーカーは刺激を送らない(I:抑制する)モードです。

 

Vという文字が無いので、心室には一切関与せず心房のみに関与します。

 

心房だけの感知と刺激なのでペースメーカーのリード線は心房に1本だけ入れます

 

自己心拍がレート設定を下回った場合にペースメーカーから刺激がでます。

 

AAIは心房だけに関与!心電図ではP波の部分にスパイクが出現。

②VVI

心室の刺激を感知(Vをセンシング)して、心室へ足りない刺激を送る(Vをペーシングする)モードです。

 

心室から自身の刺激があった場合は、ペースメーカーは刺激を送らない(I:抑制する)モードです。

 

AAIとは逆でAという文字がないので、心房には一切関与せず心室のみ感知と刺激をします。

 

ペースメーカーのリード線は心室に1本だけ入れます

 

自己心拍がレート設定を下回った場合にペースメーカーから刺激がでます。

 

VVIは心室だけに関与!心電図ではQRS波の手前部分にスパイクが出現

③DDD

心房・心室の両方(D)に刺激と感知の両方(D)を行うモードです。

 

また3文字目もDなので自己の刺激に対し抑制(I)と同期(T)を行います

 

ペースメーカーのリード線は心房・心室にそれぞれ1本ずつ入れます。

 

DDDは基本的に房室ブロックで使用されるモードです

ペースメーカーは心房(A)に同期(T)して心室(V)へ刺激を伝えています

これによって心房→心室つまりP波→QRS波と心臓が正常に動く様になっています

心房や心室で自己の刺激があればペースメーカーは刺激を送らない抑制(I)の機能もあります

心房から心室へ伝える橋渡し的な役目を果たしていると覚えましょう。

 

上限レート・下限レート

AAIやVVIでは設定レートを下回るとペースメーカーがバックアップしましたが、DDDでは心房が頻脈の場合に心室に刺激を伝えてしまわないように上限レートも設定されています

 

上限レートが130なら心房の刺激を130回/分までは同期して心室に伝えるが、それ以上は心室へ刺激を送らないといった感じです。

 

下限レートはAAIやVVIと同じで、下限レートが60なら心房の刺激が60回を下回ったらAの刺激とは関係なくVへ60回/分の刺激を送るようになっています。

 

ちなみにペースメーカーが入っていても必ず心電図でスパイクが出るわけではないです。

 

脈拍が設定レートを下回るとペースメーカーが働いて脈の代わりをします、その設定値が下限レートというわけです。

 

AVdelay(AVディレイ)

心臓は心房の収縮の後に心室が収縮するのが生理的です。

 

DDDでは心房と心室を同時に刺激しないように設定されています。

 

DELAYは遅らせると言う意味なので心房のP波を感知してから遅れて心室のQRSへ刺激をおくることをAVディレイと言います。

 

ちなみにAVDELAY200msと表示があればAからVへ200ミリ秒(つまり0.2秒)遅らせているということです。

④VDD

基本的にはDDDと同じです。

 

違うところはリード線が心室に一本だけという事です。

 

VDD用のリード線は心室の感知と刺激に加え心房の感知も行えます。

 

心房の刺激ができないので洞結節が正常な房室ブロックで適応となります。

 

DDDと違いリード線が1本で済むので低侵襲という利点があります。

VDDは基本的にDDDと一緒!リードが一本なので手術が短時間で終わる利点がある。

AAI・VVI・DDD・VDDが主流なのでこの4つは理解する。

ペースメーカーは下限レートが設定されており、それを下回るとスパイクが出現する。

DDDは心房と心室の橋渡し的なモード。心臓がスムーズに動くように上限レートやAVディレイという項目がある



ペースメーカーの適応を知る

正常な電気信号が作られなくなる洞不全症候群や、電気信号の伝達が悪くなる伝導障害が適応となります。

 

いずれも脈拍数が不十分となるので、労作時の息切れ、全身倦怠感などが生じ、徐脈が長時間続くと心不全の症状が出現します。

①洞不全症候群

SSS(sick sinus syndrome)とも呼ばれます。

 

その名の通り洞結節が機能不全になり徐脈となる不整脈です。

洞結節、つまり心房の刺激が少なくなっている状態です。

 

心室(V)は悪くなっていないのでA(心房)の刺激を感知し、A(心房)へ足りない刺激を与えてやればいい訳です。

 

そして自身のAからの刺激があればペースメーカーは刺激を送る必要はないので(I:抑制)モードとしてはAAIが主となります。

 

②房室ブロック

AVブロックと呼ばれる「伝導障害」であり、その名の通り房室で刺激がブロックされており、心房からの刺激が伝わりにくくなり徐脈となる疾患です。

 

とくに完全房室ブロック(Ⅲ度房室ブロック)では心房からの刺激が心室へと完全に伝わらなくなってしまいます。

 

「電気刺激がなかったら心室は動かないんじゃないの?」って思いますが、心臓には自動能とよばれるバックアップ機能があり、房室結節やプルキンエ線維が自発的に興奮し心室が止まらないようにします。

 

ただこの自動能での心拍数は大体40回と徐脈であり。心房が80回/分で刺激をあたえても心室は40回/分なので結果的に脳虚血による失神などを引きおこします。

 

なので完全房室ブロックはペースメーカーの絶対適応となります。

心室がきちんと機能していないのでVVIでもいいのですが、DDDの方がより生理的という理由でDDDやVDDが主流となっているそうです(循環器のDrに聞きました)。

 

DDDは心房の自己心拍をトリガー(同期)して心室へと伝えます心房、心室ともに自己心拍がみられればペースメーカーからの刺激を抑制します。

体外式ペースメーカーと体内式ペースメーカー

ペースメーカーは体内式体外式がありどちらもペースメーカー本体とリード線によって成り立ちます

 

体内式のペースメーカー本体は重さ20g程度で電池と電気回路でできています。

体外式も同様に電池と電気回路でできていますが、体の中に入れない分サイズが大きいものが多いです。

 

体外式のペースメーカーの利点は留置が簡単である』『その場で設定変更』であり、不要になればすぐに抜去することができます。

心臓術後や心臓カテーテル治療後で徐脈やブロックの予防的に使用されたり、徐脈で救急外来に受診→緊急で体外式ペースメーカーを留置し、後ほど体内式ペースメーカーを留置したりします。

ちなみに体外式ペースメーカーのことを一時的という意味の英語でテンポラリー(temporary)とも言います。

おすすめの参考書

ペースメーカーのモードはアルファベットで難しいイメージがあると思いますが、実際に使用されるモードと適応疾患は多くないのです。

 

ミダ猫もペースメーカーは苦手でしたが、慣れれば苦手意識も無くなります。心電図が苦手なおすすめする心電図の参考書を紹介します。

 

心電図が苦手な看護師さんにおすすめです!わかりやすくて、ペーシングの適応もしっかりと記載されています。

 

とにかく読みやすい一冊なので、新人からベテラン看護師さん全員におすすめできる一冊です!