看護

ICU看護師の為の酸塩基平衡の話。マジックナンバー15で評価しよう

ICU看護師のミダ猫です。今回は『ICU看護師の為の酸塩基平衡』ということで、血液ガス分析から酸塩基平衡の評価を行なう方法を看護師向けに記事にしました。

酸塩基平衡って難しいイメージが強く、何となくアシドーシスとアルカローシスは分かるけど詳しく評価はした事無い人が大半だと思います。

酸塩基平衡の評価となると、計算もあるのでさらに難しいイメージが強くなります。確かに酸塩基平衡は簡単に理解はできません、しかしICU看護師なら知っておくと自身のスキルアップに繋がります。

ICU看護師にとって、酸塩基平衡の評価は人工呼吸器管理や心電図波形の理解と同じくらい必要だと思っています。

タイトルに書いたように血液ガスの酸塩基平衡の評価、計算を簡単にする「マジックナンバー15」を記事にしてみました。是非参考にしてみてください。

 

そもそも酸塩基平衡って何だ?

私達人間の生命活動が正常に行われる為には、血液のpH(ペーハー、アルカリ性か酸性かを表す数値)が一定に保たれる必要があります。

このpHのバランスが崩れるとアシドーシス(酸性に傾いている)やアルカローシス(アルカリ性に傾いている)となり、生命活動が危険な状態となります。

その為人間の体はpHが酸性に傾けば、血液中のアルカリを増やそうという機能が働きます。この働きを代償作用と呼びます。

なぜICU看護師は酸塩基平衡の評価が必要?

一般病棟の看護師なら酸塩基平衡の知識はそこまで必要ではないと思います。しかしICUで看護をする上で、酸塩基平衡のアセスメントは重要です。

というのもICUに入室する患者さんは重症患者さんがほとんどであり、酸塩基平衡に異常が生じている場合が多いです。

例えば敗血症性ショックにより急性腎不全となった場合、尿から酸(H+)の排泄ができなくなり、代謝性アシドーシスとなります。この場合血液ガスデータから酸塩基平衡を評価する事で、代謝性アシドーシスがどれくらい進行しているか、つまり酸塩基平衡の評価を行なう事で重症度がわかります

日々の血液ガスデータを評価する事で、状態が良くなっているか悪くなっているかも評価できます。

つまり酸塩基平衡を評価できるという事は、重症患者さんの状態を評価できるという事です。



酸塩基平衡の評価に必要な検査データを知っておこう

酸塩基平衡は血液ガスの数値が必要となります。まずは酸塩基平衡を知るにあたって必要な項目とその基準値を知っておきましょう。

決して数字を暗記する必要はありません。メモ帳に書いておいて必要な時に取り出すだけで十分です。

筆者も全然覚えていないですが、メモ帳を見れば分かるようにしているので大丈夫です。

pH(水素イオン濃度)

基準値 7.35~7.45

血液の酸性・アルカリ性の指標です。酸塩基平衡の評価はまずpHを確認しましょう。pHからアシデミア(酸性)アルカレミア(アルカリ性)がどの程度かをサッと評価します。

pHが7.35より下回っているならアシデミア(酸性)、pHが7.45を上回っていればアルカレミア(アルカリ性)です。

基本的に重症患者さんの場合はアシデミアになる場合がほとんどです。呼吸、つまり換気が障害されればCO2が貯留し呼吸性アシドーシスとなります。循環が不安定になって腎臓が障害されれば、尿から排泄されるはずの酸が排泄されずに代謝性アシドーシスとなります。

pHが7.1と7.3ならもちろん7.1の方が重症であると判断できます。しかし慢性腎不全で透析中の患者さんはベースがアシデミアとなっている場合もあるので、既往歴や現疾患と合わせて評価できるとベストです。

アシデミアとアシドーシスの違い

PH<7.35になっている(酸性に傾いている)状態をアシデミア。酸血症とも言います。

逆にPH>7.45はアルカレミア。アルカリ血症とも言います。

アシドーシス血液を正常から酸性にしようとする状態を言います。

そして代償が働かなくなり酸性になった状態をアシデミアといいます。

臨床では「酸性の状態」をアシドーシスと表現したりするのであまり堅く考えずに、まずは酸性ならアシドーシス・アルカリ性ならアルカローシスの理解で十分です。

PaO2(動脈血酸素分圧)

基準値 80~100mmHg(mmHg=Torr)

PaO2は酸素化の指標。室内気(ルームエア)で60mmHg以下は呼吸不全。

動脈血液中のO2(酸素)の割合を数値化したものです。つまりPaO2が低下していれば呼吸の異常であると判断できます。PaO2が低下し、アシデミアとなっていれば呼吸性アシドーシスであるとアセスメントすることができます。

またPaO2をアセスメントする時は、酸素の投与量がPaO2に影響を及ぼすことをしっかりと理解しておきましょう。

例えば酸素投与をしていない患者さんと、リザーバーマスクで酸素を10L投与している患者さんのPaO2が80mmHgだとしたら、もちろん酸素投与をしている患者さんの方が重症です。PaO2は数値だけでなく、投与している酸素量にも注目しましょう。

PaO2は加齢により低下、また仰臥位でも低下(換気血流の悪化)

PaO2(臥位)=107.4-0.43×年齢(60歳まで、それ以降は1歳年をとる毎に1mmHgずつ低下する)

簡易的な式では
PaO2(臥位)=100-0.4×年齢

PaO2(座位)=100-0.3×年齢

PaCO2(動脈血炭酸ガス分圧)

基準値 35~45mmHg

動脈血液中のCO2(二酸化炭素)の割合を数値化したものです。CO2が排泄できないと、CO2は酸性なのでアシドーシスとなります。呼吸が原因によるアシドーシスなので呼吸性アシドーシスとなります。

CO2が排泄できない疾患としてはCOPDや気管支喘息などであり、逆にCO2が排泄しすぎる疾患は過換気症候群です。

PaCO2の高値は肺胞低換気、つまり換気が上手くできずCO2が貯留している状態。
PaCO2の低値は過換気であり、換気が多すぎてCO2が飛んでしまっている状態。

 

https://www.adpkd.jp/yomoyama/vol03.htmlより引用

HCO3-(重炭酸イオン 炭酸水素イオン)

基準値 22~26mEq/L

腎臓における酸塩基平衡調節因子です。

酸塩基平衡は呼吸と腎臓によって調節されています。CO2による調整は呼吸性の調整なので、HCO3-による酸塩基平衡の調整は代謝性の調整になります。

腎臓はH+(酸)を尿中へ排泄したり、HCO3-(アルカリ)を血液中へ再吸収することで酸塩基平衡のバランスを調整しています。しかし腎不全によってHCO3-の再吸収ができなくなったり、下痢によってHCO3-が喪失すると代謝性アシドーシスとなります。

HCO3-が高いと代謝性アルカローシス

HCO3-が低いと代謝性アシドーシス

BE(ベースエクセス)

基準値 0±2mEq/L

代謝性の酸塩基平衡の指標となる数値であり

+(正)に傾けば塩基過剰=代謝性アルカローシス

-(負)に傾けば塩基欠乏=代謝性アシドーシス

となります。

BEもHCO3-も代謝性の異常が無いかを調べる為の数値ですが、

HCO3-は呼吸性でも代謝性でも代償性でも変化します。一方BEの変化は代謝性の変化と判断できるのです

たとえばCO2とBEの両方に異常があれば、代謝性の異常であると判断します。つまりBEは代謝性の変化であるかを調べる指標です。

乳酸

基準値 0.44~1.78mmol/L

乳酸が5mmol/L以上かつpHが7.35未満の場合は乳酸アシドーシスと診断されます。乳酸アシドーシスは乳酸の蓄積が原因で起こる代謝性アシドーシスであり、様々な原因が存在します。

乳酸アシドーシスの原因

敗血症・心肺停止などによる乳酸の蓄積

基礎疾患によるもの→糖尿病、肝疾患、悪性腫瘍、尿毒症、褐色細胞腫

薬物性→アルコール、ビグアナイド薬(メトグルコ)、シアン、アセトアミノフェン



酸塩基平衡の評価

前述した血液ガスのデータで酸塩基平衡の評価に必要な項目が分かったと思います。

では実際にアシドーシスかアルカローシスか、一時変化か代償性変化なのか、という酸塩基平衡の評価の方法を解説します。

5つのステップで法則に従って計算するだけで酸塩基平衡の評価は可能です。

酸塩基平衡の評価5つのステップ

1.PHを見てアシドーシスかアルカローシスかを判断
2.呼吸性か代謝性かを表と見比べて判断する
3.代謝性アシドーシスならアニオンギャップ(AG)を計算する
4.AGが上昇していれば補正HCO3-を計算する
5.マジックナンバー15を使って代償反応は正常か判断するここに本文を入力

1.まずは酸性かアルカリ性かの評価

PH<7.35なら酸性。アシデミア(アシドーシス)です。

PH>7.45ならアルカリ性。アルカレミア(アルカローシス)です。

2.一次変化が呼吸性の変化か代謝性の変化かを判別する

アシドーシスなら一次変化(一番最初に起きた血液の変化)が代謝性か呼吸性のどちらかを判別します。

下の表を使えば簡単に評価できます。

一次変化 代償変化
代謝性アシドーシス HCO3- ↓ PCO2 ↓
代謝性アルカローシス HCO3- ↑ PCO2 ↑
呼吸性アシドーシス PCO2  ↑ HCO3- ↑
呼吸性アルカローシス PCO2  ↓ HCO3- ↓

正常値はPaCO2:40 HCO3-:24で考える

例題)PH7.20  PO2:95 PCO2:25  HCO3-:9 Na127 Cl95

①PHは7.2なのでアシドーシス。

②HCO3-9と低下し、PCO2も25と低下しているので、表から代謝性アシドーシスだと判断する。

3.AG(アニオンギャップ)の計算

AG(アニオンギャップ)=Na-(Cl+HCO3-)  基準値は12±2mEq/l

アニオンギャップとは細胞外液中の陽イオンと陰イオンの差です。

陽イオン=Na+(基準値140) 陽なので+(プラス)がついていますね

陰イオン=Cl-(基準値104)、HCO3-(基準値24)陰なので-(マイナス)がついています

上記の基準値を式にあてはめると、140-(104+24)=12となりAGの基準値の12になります。

ちなみにAGを計算するのはAGが上昇(AG開大ともいいます)するアシドーシスと、AGがそのままのアシドーシスがあるからで原因疾患によって異なります。

AG上昇するアシドーシスの原因
乳酸が蓄積したアシドーシス、ケトアシドーシス
尿毒症や敗血症
AGがそのままのアシドーシスの原因

下痢・膵臓摘出後・膵液漏など

AG上昇型のアシドーシスの方が重症度が高いと覚えてもらってよいと思います。

とくに乳酸アシドーシスは死亡率も高いです。AGを見る事で「この代謝性アシドーシスはAG上昇型だから重症」と判断する使い方で大丈夫です。

 

例題)PH7.20  PO2:95 PCO2:25  HCO3-:9 Na127 Cl95

①PHからアシドーシスと判断。

②PCO2とHCO3-から代謝性のアシドーシスと判断。

③AG=127-(95+9)=23 AG基準値は12なのでAG上昇型の代謝性アシドーシスと判断。

4.AGが上昇していたら補正HCO3-を計算する

補正HCO3-=HCO3-+⊿AG(AG-12)

補正HCO3-の数値から評価

<24 AG正常の代謝性アシドーシス合併

24~26 AG上昇の代謝性アシドーシスのみ

>26 代謝性アルカローシスの合併

乳酸アシドーシスなど、AG上昇のアシドーシスの原因となっている乳酸とは不揮発酸と呼ばれるものです。

補正HCO3-は「もし不揮発酸が無かったときのHCO3-」を計算しています。

つまり補正HCO3-の異常があれば、不揮発酸以外が原因となっている酸塩基平衡障害があるということです。

⊿(デルタ)とは変化量を意味し「差」のことです、⊿AGは「実測AG-基準値AG」となります。

例題)PH7.20  PO2:95 PCO2:25  HCO3-:9 Na127 Cl95

①PHからアシドーシスと判断。

②PCO2とHCO3-から代謝性のアシドーシスと判断。

③AG=127-(95+9)=23なのでAG上昇型のアシドーシスである。

④補正HCO3-=9+(23-12)=20 補正HCO3-が24を下回っているのでAG正常型の代謝性アシドーシスも合併していると判断する。

5.代償性変化の評価。混合性障害はないか?

最後に血ガスデータから「予測範囲」を計算します。血ガスデータの実測値が予測範囲内なら正常に代償機能が働いているということになります。

もし血ガスデータの実測値が予測値と大きく外れていると、代償機能を妨げる混合性障害があると判断できます。

以下の表に予測範囲の計算方法と代償範囲の限界値を載せています。

予測範囲 代償範囲の限界値
代謝性アシドーシス ⊿pCO2=⊿HCO3-×1.0~1.3 ⊿pCO2=15mmHg
代謝性アルカローシス ⊿pCO2=⊿HCO3-×0.5~0.9 ⊿pCO2=60mmHg
呼吸性アシドーシス急性期(~4日) ⊿HCO3- =⊿Paco2 ×0.1 ⊿HCO3- = 30 mmHg
呼吸性アシドーシス慢性期(5日~) ⊿HCO3-=⊿Paco2 ×0.35 ⊿HCO3- = 42
呼吸性アルカローシス急性期(~4日) ⊿HCO3-=⊿Paco2×0.2 ⊿HCO3- = 18 mmHg
呼吸性アルカローシス慢性(5日~) ⊿HCO3-=⊿Paco2×0.5 ⊿HCO3- = 12 mmHg

⊿(デルタ)は変化量という意味。⊿=実測値-正常値
正常値はPaCO2:40 HCO3-:24

 

例えば代謝性アシドーシスなら、PaCO2予測値の数値から代償が正常に働いているのか、それとも混合性に障害をきたしているのかを判断できます。

PaCO2予測値=PaCO2正常値-⊿PaCO2です。

 

PaCO2の予測値と現在採血データのPaCO2を比べて解離がなければ正常な代償状態と判断できます。

 

例題)PH7.20  PO2:95 PCO2:25  HCO3-:9 Na127 Cl95

HCO3-の正常値は24なので

⊿PaCO2=(9-24)×(1.0~1.3)=-15~-19.5

予測PaCO2=40-15~19.5=20.5~25

実測のPaCO2は25なので解離なしと判断する。

つまり正常の代償反応で、混合性障害は無いと判断できる。

このように計算しますが非常にめんどくさいですし、筆者も全然頭に入っていません。

なので簡単にPaCO2の予測値を計算できるマジックナンバー15を紹介します。

マジックナンバー15

代謝性アシドーシスか代謝性アルカローシスの場合、採血データのHCO3-に15を足すだけでPaCO2の予測値になります。

例題)PH7.20  PO2:95 PCO2:25  HCO3-:9 Na127 Cl95

HCO3-は9mmol/Lなので

9+15=24 つまりPaCO2の予測値は24です。

実際の検査データはPaCO2:25なので誤差1と大きく外れていないので正常の呼吸性代償と判断できます。

 

 

まとめ

1.PHを見てアシドーシスかアルカローシスかを判断
2.呼吸性か代謝性かを表と見比べて判断する
3.代謝性アシドーシスならアニオンギャップ(AG)を計算する
4.AGが上昇していれば補正HCO3-を計算する
5.マジックナンバー15を使って代償反応は正常か判断する

 

まとめるとこんな感じです。

簡単に理解するのは難しいですが、苦手意識を持たず式に数字を当てはめていくだけで大丈夫と思って下さい。

筆者もいつもメモ帳とにらめっこしているので丸暗記しなくても大丈夫です。

すべてを理解するのではなく、「こういうステップで考えるんだ」と知っておくだけで血液ガスデータの見方が変わると思います。