看護

看護のアセスメントに役立つ血圧の知識。収縮期血圧と平均血圧の違いとは?

看護師なら誰しもが測定するであろう数値が『血圧』。

看護師ならとくに血圧測定をする機会も多いはず。脳・循環器・腎臓などの各診療科はもちろん、透析中や手術中はもちろんリハビリ中など、医療者にとって血圧は重要な指標となっています。

ICUやCCUでは血圧がもたらす情報は重要です、また収縮期血圧・平均血圧といったように『血圧の種類』でアセスメント内容は変わります。

この記事ではICU看護師である筆者が血圧のアセスメントや、動脈ライン(Aライン)や平均血圧などについて紹介します。

そもそも血圧とは?

平均血圧や収縮期血圧といった項目を学ぶ前に、もう一度『血圧』について復習してみましょう。

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗です。

心拍出量はその名の通り『心臓から送りだされる血液量』であり、心拍出量は①心収縮力、②心拍数、③前負荷、④後負荷で変化します。

では前負荷や後負荷といった単語について解説していきます。

心拍出量の要因:①心収縮力

心収縮力とは『心臓のポンプ機能』のことです。

心臓のポンプとしての機能が低下していれば、心臓から送る血液の量が減るので心拍出量は低下します。心臓のポンプ機能が弱った状態は『心不全』と呼ばれます。

心臓そのものの動きを良くするなら、『ドブポン』や『ドブトレックス』といったドブタミンという薬剤、いわゆる『強心薬』を使用します。

心拍出量の要因:②心拍数

心収縮力はポンプ機能なら、心拍数は『ポンプとして送りだす回数』を調節します。

不整脈、とくに徐脈では本来必要な心拍数に足りないので心拍出量が減少します。

房室ブロックで必要な心拍数が維持できない場合は、ペースメーカーが適応となります。

心拍出量の要因:③前負荷

前負荷とは左心室が収縮する前に蓄えられている血液量で、『拡張末期容量』ともいいます。

『心臓の前の負荷』なので、心臓に戻ってくる静脈血が多くなるほど前負荷が高くなるという事です。まずは『前負荷≒輸液負荷』と考えてもらえばわかりやすいと思います。前負荷は静脈血の容量で変化するので、『容量負荷』とも呼ばれます。

 

いくら心臓がポンプとしての機能が良くても、肝心の血液が少なければ心拍出量は増えません。この循環血液量が少ない状態は『ボリュームが少ない』と表現されることが多いです。

循環血液量の評価は、エコーで下大静脈(IVC)の太さを測定したり、スワンガンツカテーテルなどで得られるSVV(1回心拍出変化)、受動的下肢挙上テスト(PLR)などです。

 

基本的には前負荷が高くなれば心拍出量は多くなります。つまり左心室が拡張すればするほど心拍出量が多くなるという事です。この『左室が拡張すればするほど心拍出量が多くなる法則』を『フランク・スターリングの法則』といいます。

フランク・スターリングの法則

左室が拡張すればするほど心拍出量が多くなる

左室の拡張が限界を超えると、逆に心拍出量は低下してしまう

心収縮力が低下していると、同じ左室の容量でも心拍出量が低下する

https://www.igakunotomo.com/shinsikan/03.htmlより引用

心拍出量の要因:④後負荷

後負荷は心臓が血液を送り出すときに加わる抵抗のことであり、後負荷が高ければ高いほど心拍出量は低下します。

心臓がポンプなら、心臓から送り出された血液が通る血管はホースで例えられます。当たり前ですがホースが細くなればなるほど心臓は頑張る必要があり、心拍出量は低下することになります。

つまり後負荷は血管の抵抗なので、後負荷≒血圧と覚えておきましょう。

心拍出量が変化する要因は①心収縮力、②心拍数、③前負荷、④後負荷

前負荷は心臓が収縮する前の負荷⇒容量負荷(まずは循環血液量と覚える)

後負荷は心臓が収縮した後の負荷⇒圧負荷(まずは血圧と覚える)

 

末梢血管抵抗とは?

心臓から送り出された血液は末梢血管へと送られます。末梢血管をホースで例えると、ホースが細くなっていると抵抗が高い⇒圧が高いという事になります。

逆にホースが太いと抵抗が低い⇒圧が低いという事です。

つまり末梢血管抵抗が高いと、血圧が高くなるという事になります。

 

ノルアドレナリンは末梢血管抵抗を増大させる(血管を締める)効果があるので、血圧が上昇するという事になります。

末梢血管抵抗はホースに例えると分かりやすい

末梢血管抵抗が高くなると、血圧は高くなる。

血圧とは様々な要因で成り立っている数値である

血圧がさまざまな要因で構成されることがわかって頂けたと思います。

なので血圧が下がった場合は、心収縮力が下がったかもしれませんし、心拍数が低下したかもしれません。輸液が不足しており、前負荷が低下することで血圧が低下したかもしれません。あるいは何らかの原因で血管が拡張し、後負荷が低下することで血圧が低下したのかもしれません。

このように『血圧低下』を一つとってみても様々な原因が考えられるのです。

血圧を構成する要因が理解できていると、血圧低下や血圧上昇のアセスメントに大いに役立ちます。



まずは血圧の種類を知る

では収縮期血圧と拡張期血圧と平均血圧の3種類について解説します。

収縮期血圧

SBP(systolic blood pressure)で、シストリック圧とも呼ばれたりします。

収縮期とは心臓の収縮であり、血圧が最も高くなる数値です。

基本的にショックなどの血圧低下時に使用されることが多く、ほとんどの施設において循環作動薬の増減に使用する数値です。

拡張期血圧

DBP(diastolic blood pressure)。

拡張期はその名の通り心臓の拡張期であり、拡張期に冠動脈への血流が増加します。

血行再建を行った冠動脈疾患の症例で、拡張期血圧の低値は死亡率が有意に増加したと報告があります。

冠動脈血流に影響するので循環器においては重要な指標の一つです。

平均血圧

MBP(mean blood pressure)です。

平均して動脈にかかる圧力ですが、収縮期と拡張期を足して2で割るのでないので注意です。

末梢の細い血管の弾力性を表す指標と言われています。

最近では敗血症の治療にも関わる数値であり、ICUでは重要な指標となってきています。

「平均血圧=脈圧÷3+拡張期血圧」で求められます。

脈圧は収縮期血圧と拡張期血圧の差であり、中枢の太い血管の弾力性を表す指標です。

収縮期血圧⇒大動脈にかかる圧力を表す

拡張期血圧⇒冠動脈の血流を表す

平均血圧⇒末梢の細い血管の弾力性を表す



収縮期血圧vs平均血圧

収縮期血圧は出血のコントロールに影響があり、平均血圧は臓器血流に影響を与えると言われています。

一般的に血圧といえば収縮期血圧を意味するのですが、ICUにおいては平均血圧が注目されています。

 

pubmedという論文サイトの「 ICUにおける血圧測定の方法」では、

平均血圧60mmHg未満で急性腎不全の発生率と死亡率が急激に上昇した。

 

収縮期血圧よりもむしろ平均血圧がICUでの治療において好ましい指標である。

と記載されています。

 

また新しい敗血症の定義であるsepsis3おいても、敗血症ショックでは平均血圧65mmHg以上の維持を目指した薬剤投与を行うことが記載されています

 

つまりICUにおいては平均血圧のほうが重要な指標となることが多いです。

 

観血的血圧測定と非観血的血圧測定

観血的血圧測定はいわゆるAラインや動脈ラインと呼ばれる測定法です。

ABPやARTと略します。

 

非観血的血圧測定はマンシェットを利用した方法ですね。

NBPやNIBPと略します。

 

それぞれの特徴をみていきます。

ABP(観血的血圧測定)

『直接動脈へ留置しているから正確』と思われそうですが、共振やなまりによって数値が変わるので正確とは断言できません。

 

そもそもどちらが正確という表現もおかしく、どちらを指標にして治療をした方が予後がいいかが問題となります。

 

ABPが高ければNBPより高値に、ABPが低ければNBPより低くなる特性があります。

結構重要な特性で、実際に臨床ではよくみられます。

 

採血ができる・リアルタイムに測定できるという大きな利点がありますが、感染や出血・血腫形成といったデメリットも存在します。

 

NBP(非観血的血圧測定)

自動血圧計はオキシメトリック法という拍動を感知して数値にしています。なので体動で数値が変化しやすいという欠点があります。

 

またカフの巻き方でも数値が変化し、皮膚障害、頻回に測ると苦痛などのデメリットがあります。

しかしABPのようにカニュレーションを必要とせず、出血のリスクがないのは大きな利点です。

 

両者の比較

ABPとNBPのそれぞれの数値をもとに治療を行った場合、「短期予後は変わらないがABPの方が治療の介入が多くなるとデータがあるそうです。

 

しかし「予後が変わらず介入が少なくなるならAラインは不要」とも言い切れません。

 

採血やリアルタイムの測定はICUや手術室などにおいては必要となります。頻回に採血する場合はAラインを留置している方が患者さんの不快は少ないと考えられます。

 

またABPはなまりやオーバーシュートでの数値変化や、低値や高値で指標となりにくくなることから昇圧剤などの増減の判断はNBPを指標とする方がよいと言えます。

 

ABPで血圧が下がってきたら(上がってきたら)、NBPで測定して評価するという方法を自然と行っている人も多いのではないのでしょうか?

おそらく臨床の経験からABPよりNBPを指標にしたほうがコントロールしやすいことを学んでいるのでしょう。

 

しかしマンシェットによる血圧測定は、患者さんの体型や看護師の巻き方で指標とならない場合もあります。

 

しっかりと両者の特徴を把握することが大切です、互いの特徴を理解することで血圧のアセスメントがしやすくなります。



マンシェット測定の血圧変動要因

・マンシェットをきつく巻くと収縮期血圧は低く拡張期血圧は高く、逆にゆるく巻くと血圧値は高くなる。

・マンシェットの幅は広すぎると圧迫圧が低くなって最高血圧が低めになり、狭いと高めに測定される。

・頻回に血圧測定をすると、痛みやストレスで血圧が高くなる場合がある。

・白衣高血圧といったような、血圧測定に緊張して血圧が高くなる場合がある。

Aライン測定の血圧変動要因

https://www.nihonkohden.co.jp/iryo/point/catheter/pressure.htmlより引用

・共振⇒Aライン回路に小さな空気が混入している場合に起こる。正確な血圧の測定を行うため、エア抜きが必要。

・オーバーシュート⇒足背動脈などの末端の動脈に留置している場合や、ノルアドレナリン使用などの『末梢血管抵抗が高い』場合に起こりやすいです。本来の血圧より高値になります。

・なまり⇒Aラインの先端が血管に当たっていたり、大きな空気が回路に混入している場合に起こる。血圧は低く表示される。カテーテルを少し引くなどで対処できるが、先端に凝血が生じている場合もある。

まとめ

血圧を構成する要素は多い。それぞれの要素を理解しておくとアセスメントに役立つ。

・敗血症のガイドラインでは平均血圧が重要視されている。現在のICUにおいては平均血圧の方が重要であるかもしれない。

・Aライン測定とマンシェット測定はそれぞれ利点がある。どちらかだけを指標にするのではなく、両社の特徴をりかいしてアセスメントする。

 

【余談】アレンテスト

手指は橈骨動脈と尺骨動脈によって血流支配されています。

 

特徴として手のひらで橈骨動脈と尺骨動脈がループを形成しており、どちらか一方が閉塞してももう一方が血流を補うようになっています。

もし尺骨動脈が閉塞している患者さんに動脈圧ラインを橈骨動脈へ留置してしまうと橈骨動脈の血流も悪くなり最悪の場合指が壊死する可能性もあります。

 

そういった場合、アレンテストと呼ばれる方法で動脈閉塞が無いかを確認することができます。

【テスト方法】
1.橈骨動脈と尺骨動脈を指で圧迫し血流を遮断する。

2.圧迫したまま患者さんにグーパーを繰り返してもらい(10回程度)手を開く
意識がない時は看護師がグーパーしたり、手のひらを指でマッサージしたりします。

3.手のひらが蒼白になれば尺骨動脈側の圧迫を解除します。

4.10秒以内に赤みが戻れば尺骨動脈側の血流が保たれていると判断できます。

10秒以上たっても赤みが戻らない時はアレンテスト陽性となり、動脈閉塞が考えられる為穿刺するべきではないと判断できます。

 

心カテならともかくAラインの様な細いカニューレでアレンテストをする医師はほとんどいないと思います。

なぜアレンテストを紹介したかというと、看護師がアレンテストする為ではなく、動脈圧ライン留置による血流障害の可能性もあるということです。

ただAライン留置で血流障害が起きた例は見たことないですし聞いたこともないです。

可能性としてはほとんどないと思うのですが、知識の一つとしてインプットしておくと損はしないと思います。