看護

PICS(集中治療後症候群)の症状と対策。PICS-Fの対策にはICUダイアリーが有効?

PICSという言葉をご存知でしょうか?ICUで勤務をしている看護師さんなら知っている人も多いと思いますが、PICSはpost intensivecare syndromeの略で、集中治療後症候群と呼ばれます。

PICSは『ICU入室後に生じる運動、精神、認知機能の障害』であり、患者さんやその家族のQOLを低下させる原因となります。

PICSへの取り組みは、近年のICUでの大きな課題となっています。私たちICU看護師はPICSについて理解し、チームでのPICS予防を実践する必要があります。

PICS対策が必要となった背景

PICSは2010年にアメリカの集中治療医学会で提唱された概念です。

ICUを退室した患者さんは6ヵ月後に3分の1の方が亡くなり、3分の1の方はADLに障害がある生活を余儀なくされていると言われています。

医療の発展により、ICU入室患者さんの生存率は高くなりました。しかし近年注目されているのは、ICUでの短期的な予後だけでなく、ICU退室後の長期的な予後を考えた看護が必要となっています。

しかしPICSが提唱されてからまだ期間も短く、日本ではまだPICSについてしっかりと周知されていない状況です。

家族の精神機能障害であるPICS-F

ICU入室による影響は患者さんだけでなく、その家族にもあるとされており、家族の精神的な障害を『PICS-F』と呼びます。

重症患者さんの家族にも、ICU退室後、不安、抑うつ状態、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害が発症し、患者さんがICUを退室した後も続くと言われています。

症状としては睡眠障害が多く、抑うつ症状や注意力低下などもありす。

PICS-Fの予防には医療スタッフと家族のコミュニケーションが重要であるとされています。家族に十分な情報提供を行い、情報を共有し、家族自身の適応力や対処能力を引き出すことが大切です。

PICSやPICS-F予防の一環として『ICUダイアリー』と呼ばれる取り組みを行っている施設もあります。これは欧州では普及していますが、日本ではまだ馴染みがありません。



ICUダイアリー(ICU日記)

ICUに搬送された患者さんの回復過程や家族のメッセージを、看護師がダイアリー(日記)形式で書き留めるものです。

ICUに入室する患者さんは治療中の断片的な記憶しかない場合が多いので、治療の過程を記録したダイアリーは、読み返すことで患者の記憶を正す効果があるとされています。

またICU退室後の鬱状態や、倦怠感などの予防にも有効であるとされています。

参考URL:産経WEST 治療中の記憶呼び戻す“ICUダイアリー” 写真、家族からの言葉…患者の表情変わる 兵庫・尼崎の看護師ら導入進める



PICSの症状

PICSの症状は運動機能障害精神機能障害認知機能障害の3つに分類されます。

ICU-AWはICU入室後に発生する急性の左右対称性の四肢筋力低下を起こす症候群です。これらの症状は単独でみられる事もあれば、複合的にみられる場合もあり、症状は患者さんによって様々です。

  • 運動機能障害

呼吸器系の障害、神経筋系の障害、ICU-AW

  • 精神機能障害

不安、急性ストレス障害、PTSD、うつ

  • 認知機能障害

実行機能障害、記憶・注意力の障害、認知処理速度の低下

 

PICS予防の方法

PICSの予防にはABCDEFバンドルの実践が有効であるとされています。

ABCDEFバンドルは各項目の頭文字を併せたものであり、ICU入室が原因でおこる様々な合併症を予防するための方法をバンドル(束)で行おうというものです。バンドル(束)なので、項目を一つだけ実践するのではなく、複数の項目を実践する事が大切です

https://midaneko.com/wp-admin/post.php?post=1697&action=edit



まとめ

・PICSは集中治療後症候群であり、ICU入室後に生じる運動、精神、認知機能の障害

・PICS対策はICUでの短期的な予後だけでなく、長期的な予後を改善する

・重症患者さんの家族の精神機能障害をPICS-Fという

・PICS対策には家族と協力して行うICUダイアリーが有効であるとされている

・PICSの予防にはABCDEFバンドルが有効

ICUが救命を行うだけの時代は終わり、長期的な予後を見据えた看護が必要になっています。重症患者さんの長期的な予後を改善するには、PICS対策が重要です。

PICS対策は個人だけでなく、チームでの対策が重要です。是非チームで学習会等を開催し、病棟全体で取り組んで下さい。