看護

ICUでも身体抑制ゼロは可能?ICU看護師が知っておきたい身体抑制の事

身体抑制または身体拘束ですが、看護師をしていると身体抑制は誰もが一度は経験した事があるのではないでしょうか?

身体抑制はいけないこと」とは分かっていても、ルートやドレーンが抜けないように、安全の為に抑制をしている事も多いとは思います。

しかし安全の為とは言え、できるなら身体抑制をしない方が患者さんにとってもいいことです。最近では金沢病院の事例で「急性期病院で実現した 身体抑制のない看護」という本が出版され、急性期病院においても身体抑制ゼロの看護が可能である事を報告されました。その影響もあり、筆者の所属するICUとHCUにおいても身体抑制をできる限りゼロにしようとする取り組みが多くなりました。

今回はICUやHCUでも身体抑制の無い看護が可能なのか?という記事です。

身体抑制についておさらい

そもそも身体抑制とは?

日本看護倫理学会の身体拘束予防ガイドラインにおいて、身体抑制は『車椅子やベッドに四肢や体幹を縛る』『降りられないようにベッドを柵で囲む』『点滴などが抜けないようにミトンを装着する』『過剰に向精神薬を投与する』という行為を指しています。

身体拘束予防ガイドラインでは『身体拘束はなぜ問題なのでしょうか?』という問いに対し、『そもそも人間は自由を求める存在であり、自由ほどQOLを高めるものはない。看護の目標は自由度を拡大することにあり、身体拘束は基本的人権や人間の尊厳を守ることを妨げる行為であることが大きな問題(一部編集)』と回答しています。

点滴の自己抜針や徘徊に対しても、『安易に身体拘束をするのではなく、それに代わる方法はないか充分に検討し、やむを得ない状況をなくすために看護職として何をなすべきかを考えることが必要』と記載されています。

まず身体抑制以外で行える事を十分に考え、身体抑制に代わる手段が無い場合に初めて抑制を開始することになります。

身体抑制の3要件

身体抑制の3要件として「切迫性・非代替性・一時性」があります。これは厚生労働省の「身体拘束ゼロへの手引き」で示されたものです。

身体抑制は限定的な行為であり、身体抑制が認められるには、この3要件をすべて満たした場合であるとされています。身体抑制を開始する際は看護記録に『3要件を満たす為、身体抑制開始とする』といったように記載するようにしましょう。

1.切迫性

利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いことをいいます。

身体抑制を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもなお身体抑制を行うことが必要となる程度まで利用者本人等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が高いことを確認する必要があるとされています。

つまり身体抑制をするにあたっては、身体抑制をおこなうことによるデメリットをしっかりと理解し、それでも身体抑制をしなければ患者さんあるいは他の患者さんに危険が及ぶ可能性が高いことを、しっかりと記録に残す必要があります。

2.非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないことです。

いかなるときでも、まず身体拘束を行わないすべての可能性を検討し、利用者本人等の生命又は身体を保護するという観点から、他に代替手法が存在しないか複数のスタッフで確認する必要があります。

また拘束の方法自体も、最も制限の少ない方法により行わなければならないとされています。

3.一時性

身体抑制その他の行動制限が一時的であることです。

一時性の判断を行う場合には、本人の状態に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要があるとされています。

チーム対応の重要性

身体拘束予防ガイドラインでは個々の看護師の判断で身体抑制を開始・解除するのでは無く、チームでディスカッションし、合意形成した方向性に基づいて行動するチーム医療を定着させることが重要』と記載されています。

個人で『身体抑制ゼロ』を目指すには限界があります。身体抑制の基準やアセスメント方法を病棟内で統一しておかないと、個人の感情によって身体抑制が行われたりしてしまいます。

身体抑制については必ず病棟で開始基準を決めておくことが大切です。また抑制を開始すればずっと継続するのではなく、毎日チームで抑制が継続必要なのか評価し、抑制は最小限になるようにすることが求められます。
身体拘束を開始する時は一人でなく必ず複数名で検討し記録に記載することが大切です。



ICUにおける身体抑制

ICUでは挿管管理であったりCVカテーテルやAライン、場合によっては透析カテーテルやIABPなどが留置されており、すべてが治療において必要なデバイスです。デバイス類の事故抜去防止の為、ICUでは身体抑制がなされていることが多いと思います。

しかし現在、身体抑制は最小限あるいは抑制をゼロにするの取り組みが行われており、抑制をしない看護が必要とされています。ICU看護師は身体抑制について考えることが求められています。

ICUでの身体抑制ゼロは可能か?

これは筆者の考えですが、ICUにおいて完全に身体抑制をゼロにする事は難しいと思います。しかし不必要な身体抑制をゼロにする事は可能です。

実際に筆者の勤務しているICU・HCUでは日勤帯では気管挿管管理の患者さんでも抑制をオフにしている場合が多いです。もちろん抑制解除中は看護師が傍にいて観察をおこなっています。

夜勤帯で継続して観察ができないは抑制を行いますが、夜勤帯でもできる限り抑制解除を行っています。

このようにICUでも身体抑制に頼らない看護は可能であると言えます。

身体抑制を減らすとデバイスの自己抜去が増える?

筆者の施設では、身体抑制の頻度を減らしてもデバイスの自己抜去は増えませんでした。

気管挿管中の患者さんの場合、身体抑制を解除した場合は看護師が傍で観察を行う為、身体抑制抑制解除時の挿管チューブの自己抜去は今までありません。むしろ挿管チューブの自己抜去は、身体抑制中の患者さんに起こっています。

身体抑制をすることによって、観察する事が減ってしまいます。その結果、抑制帯の緩みや抑制帯から手が抜けて自己抜管に至ったケースが多いです。

気管挿管患者さんに対して身体抑制がルーチンとなっていると分かりませんでしたが、自己抜管防止には身体抑制よりも看護師の観察が重要だと言えます。



ICU看護師は身体抑制以外の方法も考えよう

身体抑制はあくまで最終手段である事を認識しておく必要があります。看護師は身体抑制を行う前に、身体抑制以外の方法で代用できないかをしっかりと評価する必要があります。

必要無いデバイスは留置されていないか

ICUで身体抑制を行う理由はデバイスの自己抜去防止が多いと思います。

必要でないデバイスが留置されていないか、留置されているデバイスはまだ必要なのかをアセスメントする事が必要です。

必要なデバイスでも、ルートが気にならないような固定はできないかなど工夫をしてみても良いと思います。

せん妄の評価

身体抑制が必要か評価するには、患者さんにせん妄が起こっていないか評価する事が必要です。

せん妄歴があるから抑制といった評価ではなく、ICU-AWやICDSCなどのせん妄評価ツールを使用して毎日評価する事をおすすめします。

人工呼吸器管理中ならRASS評価も有用です。

適切な鎮痛鎮静が行えているか

人工呼吸器管理中なら適切な鎮痛鎮静が行えているかの評価が重要です。

ここでいう適切な鎮静とはRASSスコアでいう0か-1です。決して過鎮静にする事ではありません。

確かに過鎮静にすれば自己抜管のリスクは下がるかも知れませんが、それ以上に人工呼吸器期間の延長やせん妄のリスクも上昇します。

身体抑制のアセスメントやカンファレンスは必須

ICUやHCUにおいては身体抑制のアセスメントやカンファレンスが重要です。

特に身体抑制が必要かどうかを一人でアセスメントするよりも、医師と看護師、あるいは看護師だけでも複数人で身体抑制が必要かどうかをカンファレンスし記録に残す事が必要です。

筆者の施設でも身体抑制のカンファレンスを1日1回医師とともに行っています。複数名で身体抑制をアセスメントする事で必要でない身体抑制や、身体抑制以外での対応が見えてくる場合があります。

 

まとめ

・身体抑制は「切迫性・非代替性・一時性」の3要件がすべて満たした場合に行なう。必ずチームでの評価を行なう。

・ICUにおいても身体抑制に頼らない看護は可能。その為には患者さんの観察が大切。

・身体抑制以外の方法を考えることも大切。身体抑制は毎日アセスメントする。

ICUにおいて身体抑制ゼロは理想論かもしれない、しかし不可能ではないと思います。

それには患者さんのケアの中心となる看護師の関わりが重要です。身体抑制ゼロを目指すには、看護師が主体になっていかなければいけないと思います。