看護

CVCI(換気挿管困難)時における看護師の対応や挿管補助物品の話

CVCIという言葉はご存知でしょうか?換気挿管困難(CVCI;Cannot Ventilation Cannot Intubation)を表す略語であり、しばしば手術室やER、ICUといった挿管を行なう部署で遭遇する可能性があります。

CVCIは看護師経験の長い方でも経験することは少ないかも知れません、しかし気道確保や換気が困難となれば一刻も早い対応が必要となります。

この記事では現役ICUナースである筆者が、CVCI時における看護師の対応や気管挿管を補助する物品についてまとめました。またCVCIに対応する為のDAMカートの必要性についても記載しました。

ICUやERで働く看護師さんは是非参考にしてみて下さい。

CVCIとは

Cannot Ventilation Cannot Intubationの略で換気挿管困難、つまり気管挿管およびマスクによる換気が困難・不可能な状態です。

気管挿管が難しい場合である挿管困難なら、とりあえずマスク換気で呼吸を保つことは可能です。しかしCVCIはマスクによる換気も困難であり、気管挿管が必要な患者さんは、呼吸状態が悪化している場合がほとんどなので、マスク換気が行えないと低酸素状態から最悪心肺停止状態へと移行してしまいます。

その為CVCIの状態となった場合は早急に対応しないと、最悪死に至る場合もあります。

CVCIの発生頻度は、1万症例に対し2症例程度の割合と言われており、その発生頻度は多くはありません。

しかしCVCIが発生すれば生命に直接関わるため、挿管時には必ず意識をしておく必要があります。

 

CVCIのリスク因子

換気困難のリスク因子としては、肥満・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の既往がある・マスクフィッティング困難などが挙げられます。

また鎮静剤の影響で気道部の筋緊張低下おこり、咽頭、口頭部の組織が背側へ垂れ込み気道が狭窄する事により、換気。挿管困難となる場合があります。

挿管困難のリスク因子は、肥満・頸部の後屈困難・小顎・短頸・挿管の刺激による声門浮腫や出血などが挙げられます。

換気困難・挿管困難はともにあるていど予測することが可能です。挿管前には上記のCVCIのリスク因子に当てはまる場合は、事前にリスク因子を除去するか、CVCIの対応物品を用意するなどして対応することが必要になります。



挿管困難に対する挿管補助物品

挿管困難や換気困難の予測はある程度できるのですが、実際には緊急で気管挿管が必要となるケースも多く、いつでも万全に対応できるとは限りません。

緊急で気管挿管が必要な場合は、患者さん自身の状態が悪いので、CVCIになった場合は早急に対応が必要です。あらかじめCVCIに対応できるように、普段から必要物品を用意しておく事が大切です。

特に挿管困難においては『挿管補助物品』の使用が有効です。介助者である看護師はスムーズに物品が準備できるように、普段から学習をしておく事、使用時にきちんと使えるように保守点検を行うことが大切です。

マックグラス

画像引用元:コヴィディエンジャパン

形状が喉頭鏡に近く、ブレードの先端にカメラが内蔵されており、挿管時の状況がモニターに映し出されます。

先端はディスポーザブルのブレードを装着し、サイズも変更することが可能です。

扱い方は喉頭鏡そのものなので、専用の操作が必要でなく扱い易いです。モニターは挿管実施者が見るというよりは、介助者や周りの医師が口腔内の状況を確認できるのがメリット。
口腔内に唾液が多ければ吸引を行ったりと、モニターを見ながらBURP法ができるなど、挿管の介助において効果を発揮します。

緊急時でも扱いが簡単であり、挿管困難に対する効果は高いです。

専用のリチウム電池で動きます。緊急時に電池切れを起こさないように日頃からの保守点検が大切です。

エアウェイスコープ

画像引用元:日本光電

マックグラスのようにカメラとモニターが付いていますが、特徴として喉頭鏡と気管支鏡を混ぜたような形状をしています。

イントロックという、専用のディスポーザブルのブレードに挿管チューブをセットする事ができ、モニターを見ながら挿管チューブを挿入する事が可能です。

マックグラスとの違いとして、マックグラスはあくまで喉頭鏡として使用しますが、エアウェイスコープは気管支鏡に近く、モニターを見ながら操作します。気管支鏡のように使用できるので、頸部後屈が不要であり、後屈困難や肥満などの症例では特に効果を発揮します。

イントロックや挿管チューブの装着に慣れが必要な為、普段から操作方法を確認しておく必要があります。また電池で動作するため、保守点検も大切です。

気管支ファイバースコープ(気管支鏡)

画像引用元:日本呼吸器内視鏡学会

挿管チューブに気管支ファイバーを通して、ファイバー下に挿管を行う方法です。

ファイバー操作に熟練を要する、セッティングが慣れていないと時間がかかるなどが問題ですが、直接声門を確認しながら挿管できるので、確実性が高いのが特徴です。

準備に時間がかかり、操作に熟練を要しますが、後屈困難や肥満症例に効果があり、吸引しながら挿管ができる、映像をモニターに出力できるなどのメリットも大きい方法です。

 

ラリンジアルマスク

盲目的に口蓋に沿わせて挿入し、声門上で換気を行う方法です。

喉頭鏡の必要がなく、気管挿管よりも侵襲は少ない、挿入が簡単であるといったメリットがあります。

しかし気道と食道が完全に分離できていない、あくまで声門上に留置するので喉頭痙攣や声門浮腫などでは換気ができない場合がある、といったデメリットもあります。

 

チューブエクスチェンジャー、ガムエラスティックブジー

画像引用元:電脳麻酔ブログ

一見するとただの細くて長い棒です。この棒を挿管前に喉頭鏡を用いて先に声門へ通して留置しておく事で、挿管時は留置している棒をガイドにして挿入することが出来ます。

気管挿管においてガイドワイヤーのような役割を果たします。

挿管困難症例の抜管や気管チューブ入れ替え時にも使用される場合があり、抜管前にあらかじめ留置しておく事で、すぐに再挿管が必要になってもガイドにして挿管できます。



マスク換気困難における対応

マスク換気における換気困難は下顎挙上、頭部後屈、経口あるいは経鼻エアウェイで大半は対応できると言われています。

これらの処置で換気が改善しないなら補助者を加え、1人がしっかりとマスクホールドを行い、1人がバッグを揉んで換気をします。

それでも換気ができない場合は、麻酔導入中なら覚醒させる、覚醒が難しい場合はラリンジアルマスクや気管挿管を行います。

それでも換気が行えないならCVCIとしての対応が必要となります。

挿管困難における対応

挿管困難時における対応は、基本的に前述した挿管補助物品の使用となります。

ここでは挿管補助物品の使用以外の対応方法も紹介します。

意識下挿管

その名の通り意識下に気管挿管を行なう方法です。

挿管困難が予測される場合、意識下に挿管してしまえば、仮に挿管できなくても自発呼吸は消失しないので安全であるという考え方です。

予定手術などで挿管困難や換気困難が分かっているなら用いられる場合もあると思いますが、挿管技術が発達した今はあまり見ることのない挿管方法だと思います。

挿管による苦痛を軽減するためにキシロカインスプレー散布で局所麻酔を行い、挿管後はすぐに鎮静を行います。

BURP法

喉頭展開した時に喉頭蓋は確認できるが、声門の全体像が十分に視野に入れられない場合は、介助者が喉頭(甲状軟骨部)を「後方、上方、右方」へ圧迫すると声門が見えやすくなります。

BURPの由来は、甲状軟骨部分を背側(backward)、上方(upward)、右側(rightward)に圧迫する(pressure)の頭文字を合わせたものです。

マックグラスでは介助者もモニターで確認できるのでBURP法の効果が高くなります。



CVCI時の対応

換気困難と挿管困難の状態が合わさった場合はCVCIとして早急に対応が必要になります。

気管挿管ができれば一番良いのですが、気管挿管が難しい場合は気管切開を行って換気を行なう必要があります。

緊急時の気管切開方法は何種類かあるので、それらを紹介したいと思います。

1.輪状甲状間膜切開

スピッツメスとペアンを用いて輪状甲状間膜を切開し、気管カニューレを留置する方法です。

輪状甲状間膜切開は気管へアプローチしやすく、緊急時においては、外科的気管切開よりも迅速に行える利点があります。また外科的気管切開は多くの器具が必要、手技に精通している必要があるのですが、輪状甲状間膜切開は気管切開より容易に行えます。

ただしあくまで緊急処置であり、出血や甲状腺を傷つけるリスクがあり、気管カニューレのサイズも小さいものが使用されます。

2.輪状甲状間膜穿刺

18Gよりも太い穿刺針やトラヘルパーといったキットを使用して、そのまま気管へ到達する方法です。

メリットは必要物品も少ないので、とにかく速く気管へ到達できる事です。しかしデメリットとして 、穿刺針の内腔が細いので十分な換気量が確保できない、気管吸引ができない、固定がしっかりとできず抜去しやすいなどです。

穿刺後の換気方法としてジェット換気と呼ばれる換気法があります。ジェット気流を利用して換気による圧を低く保ちつつ換気量を維持しようとする方法です。

圧外傷のリスクが高く、排気は上気道から行うので、上気道が閉塞している状況ではとくに圧外傷のリスクが高くなるので禁忌です。必ず胸郭が下がって排気できているかを確認しながら換気を行います。

ジェット換気の一例

画像引用元:日本メガケア株式会社

 

穿刺針留置後の換気方法

穿刺針の内径によっては、送気の抵抗が強く、バッグバルブマスクによる換気が困難な場合があります。

穿刺針は細く、呼気が行いにくいので、送気に対し排気は十分な時間をとる必要があります(I:Eを1:3と言われていますが、上気道の閉塞状態で変わるそうです)。

ちなみに穿刺針に直接BVMが装着できないので、2.5mlシリンジの外筒と8mmの挿管チューブのコネクタを繋げて接続します。

3.ミニトラックⅡ(セルジンガーキット)の使用

 

ミニトラックと呼ばれるガイドワイヤーつきのキットを使用し、セルジンガー法で気管へ到達してカニューレを留置する方法です。

輪状甲状間膜切開や輪状甲状間膜穿刺よりも時間はかかりますが、確実性が高く、吸引や自発呼吸も可能です。

もともとミニトラックは痰を吸引するためのものなので、BVM換気する際はコネクターを装着して換気します。くれぐれも直接酸素チューブを直接繋がないようにしましょう。

YOUTUBEで「輪状甲状間膜切開」と検索すれば動画が見れると思いますが、慣れている先生だと1~2分で挿入できます。

輪状甲状間膜切開や穿刺による換気は、あくまで緊急処置なのですぐに確実な換気方法へ変更する必要があります。



DAMカートとその必要性

CVCIの対応には常日頃からの準備が必要となります。

どれだけ緊急時に対応できるスタッフが揃っていても、物品が無ければ対応できません。

CVCIの対応にはDAMカートDifficlut airway management)の準備が推奨されています。

挿管困難や換気困難に対応する物品を用意しておくことが、CVCIへの対応においてもっとも重要であり、看護師における物品管理や保守点検が欠かせません。

画像引用元:社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院の指導医日記より

 

 

まとめ

・CVCIとは『換気困難・挿管困難』であり、早急に対応しないと生命に危険が及ぶ状態。

・換気困難、挿管困難のリスクアセスメントを行うことで、CVCIの発生に対応する必要がある。

・換気困難に対しては、2人でのマスク換気やエアウェイの挿入。挿管困難に対しては、挿管補助物品の使用などで対応する。

・様々な手段を使用しても換気・挿管が困難な場合はCVCIとして対応する。CVCI時は緊急気管切開が必要となる。

・CVCIにおける気管へのアプローチは、『輪状甲状間膜切開』『輪状甲状間膜穿刺』などがある。

CVCI発生時においては物品の備えが重要です。物品はあるだけではダメです、しっかりと保守点検を行い、介助者も使用方法を理解しておく必要があります。

CVCIは日常的に起こるものではありませんが、常日頃からのシミュレーション学習や物品取り扱い方法の学習をしておくことが看護師にも求められることだと思います。