看護

ABCDEFバンドルを知らずにICU看護師していませんか?しっかりと理解して実践しよう!

ICUに配属になったものの『何を勉強すればいいか分からない』という新人看護師さんも多いのではないのでしょうか?

人工呼吸器や心電図の学習も大切ですが、ICUに勤務している筆者としてはABCDEFバンドルを知っておいて欲しいと思っています。

ABCDEFバンドルはICUに入室した患者さんの合併症を予防するための考え方であり、ICUで勤務する医師や看護師なら知っておくべき指針なのです。

ABCDEFバンドルを理解する事で、医師や先輩看護師の考え方が理解できることもあります。この記事ではABCDEFバンドルについてまとめましたので、是非新人看護師さんは参考にしてみて下さい。

ABCDEFバンドルとは?

2010年にVasilevskisらによって提言された概念で、上記のように各項目の頭文字を併せたものであり、ICUに入室が原因でおこる様々な合併症を予防するための方法をバンドル(束)で行おうというものです。

ICUにおいてABCDEFバンドルを順守した場合、院内生存率の増加、せん妄期間の減少があった研究結果もあり、ABCDEFバンドルの理解と実践は患者さんに良い効果をもたらします。

ABCDEFバンドルを知らずしてICU看護師は勤まりません。医師・看護師・理学療法士が共通して理解するべき概念なので、ABCDEFバンドルはICUで勤務するスタッフの共通ルールともいえます。



ICU入室に関連する合併症とは?

人工呼吸器期間の延長

ICUに入室する患者さんの多くは重症な場合が多く、人工呼吸器管理となる場合が多いです。

人工呼吸器管理の患者さんに対して、早期から鎮静薬中断による覚醒テストと人工呼吸器離脱の評価を行うと、人工呼吸器期間の短縮が見られたという研究結果があります。

つまり人工呼吸器管理の患者さんは、医療者から何も介入されなければ、人工呼吸器期間が延長してしまうリスクがあるのです。

せん妄

ICU入室患者さんは環境や薬剤の影響もあり、せん妄発症のハイリスク状態となっています。

たかがせん妄と思われがちですが、せん妄期間の延長は予後の悪化に繋がると言われており、ICU管理においてせん妄の予防は重要なのです。

せん妄になると身体抑制や薬剤投与での対応となる場合が多いので、せん妄は発症させないように予防することがICU看護師の役割です。

ICU-AW

ICU-acquired weaknessの略で、ICU関連筋力低下と呼ばれるものです。

ICU入室が原因となって筋力低下や神経障害を引こおこし、ICUを退室した後もADLの低下からQOLの低下に繋がります。

敗血症、ステロイドの使用、鎮静薬の使用など原因は様々で、治療というより予防が重要になります。

PICS

post intensive care syndromeの略で、集中治療後症候群と呼ばれています。

PICSはICU入室中または退院後に生じる運動機能障害、認知機能障害、精神障害であり、長期にわたって患者さんとその家族の予後に影響を与えるものと定義されています。

PICSは基礎疾患による病態に加え医療行為やICUという環境によるストレスなどが原因となって引き起こされるとされています。

ICU-AW同様に予防が重要であると言われており、ABCDEFバンドルの実践が効果的です。

ICU入室による合併症は人工呼吸器期間の延長・せん妄・ICU-AW・PICS。

これらの予防としてABCDEFバンドルが有効!



ABCDEFバンドルの項目を解説

ICU入室によって引き起こされる合併症は、どれも予防が重要であるとされています。

ABCDEFバンドルの実践は合併症予防に有効であり、ICU入室期間の短縮に繋がります。しかし個人単位で行っても効果は薄いため、ベテランナースから新人ナースまで病棟が一丸となって取り組む必要があります。

A:毎日の覚醒テスト

SAT:spontaneous awaking trialで覚醒テストを意味します。

人工呼吸器管理中の患者さんのほとんどは薬剤で鎮静管理されています。鎮静薬を一旦中止あるいは減量する事で、鎮静状態から覚醒させて意識状態を確認する事を覚醒テストあるいはSATといいます。

毎日の覚醒テストは

・意識状態を確認する事で意識状態が低下する疾患(脳血管疾患など)の有無を観察する。

・鎮静薬を一日一回中断することで鎮静薬の過剰投与を予防する。

・鎮静薬の影響によるせん妄やICU-AWといった予後を悪化させる合併症を予防する。

といった役割があります。

覚醒テストは鎮静薬による合併症を低下させる効果がありますが、どの患者さんでも覚醒テストを行ってもよいという訳ではありません。

施設によって異なりますが、『現疾患が落ち着いている』『呼吸状態が落ち着いており瀕呼吸やCO2の貯留がない』『循環動態が安定している』といった条件下に行います。

覚醒テストは循環や呼吸状態が変動する事が多いため、医師の指示のもと看護師が観察を行いながら実施します。

覚醒テスト(SAT)の方法

・フェンタニルなどの鎮痛薬は投与しながら、鎮静薬を中断あるいは極少量の投与にする。

・鎮痛薬のみでのコントロールが難しい場合はプレゼデックスの投与を行う。

・SATが成功した場合はSBT(人工呼吸器の離脱トライ)を行う。

SAT成功の判断は施設によって異なりますが、『せん妄なく覚醒している(RASSスケールで-2〜+1)』『離握手や頷きといった動作が確認できる』といった点を医師と共に観察し、成功かを判断します。

もし不穏などが見られた場合はSAT失敗とし、鎮静を再開します。そして翌日に鎮静薬の減量をゆるやかにして再トライします。

B:毎日の呼吸器離脱トライ

SBT spontaneous breathing trialで呼吸器の離脱トライです。

呼吸器の離脱トライや呼吸器のウィーニングと呼ばれ、呼吸器の離脱に向けて人工呼吸器のサポートを徐々に少なくしていきます。人工呼吸器は呼吸の代わりを行ったり、呼吸をサポートしますが、最終的には人工呼吸器の離脱を目的とします。

その為毎日「人工呼吸器を離脱できるか、あるいは人工呼吸器のサポートを下げることができるか」という評価がSBTの考え方です。

呼吸器離脱トライ(SBT)は覚醒テスト(SAT)同様に『現疾患が落ち着いている』『循環動態や呼吸状態が不安定ではない』という条件で、医師の指示のもと開始します。

呼吸器離脱トライ(SBT)の方法

・人工呼吸器設定をCPAP+PSへ変更

・FIO2:0.4 PEEP:5 PS:0~ 7へ変更し、呼吸状態の変動がないかを医師と看護師が確認する。

呼吸器離脱トライの成功は覚醒テストと同様に施設によって基準は異なりますが、CPAPモードでバックアップ換気がかからずに、呼吸状態の悪化がない事が条件となります。

呼吸器離脱トライの成功は抜管が可能ということになります。もともとの呼吸疾患の有無などで判断が変わるので、最終判断は医師が行います。

覚醒テスト(SAT)・呼吸器離脱トライ(SBT)ともに失敗すればなにが要因で失敗しているのか、原因検索し翌日からリトライして行きます。

毎日行うことで、抜管ができない問題は何かを導き出すことが出来るので、医師や看護師が目標を共有しやすいのが利点です。



C:適切な鎮痛鎮静薬の選択

coordination and choice of drugsで適切な鎮痛鎮静薬の選択です。

鎮静薬にはせん妄や循環動態の抑制など副作用がある為、できる限り最小限の投与量になるように常に評価が必要です。

また鎮痛薬が適切に使用されていないと体動が強くなり、鎮静の評価が行いにくくなったり、計画外抜管のリスクが高くなります。

看護師は鎮痛薬や鎮静薬の特徴を理解しアセスメントする必要があります。

次にICUでよく使用される鎮痛薬・鎮静薬の特徴を紹介します。

ミダゾラム・ドルミカム

ベンゾジアゼピン系の鎮静薬であり、作用発現が早く持続時間も短いのですが、数時間以上投与することで投与を中止した後も効果が遷延しやすくなります。

腎不全の患者さんでは排泄が遅れるので、薬の効果がより遷延しやすくなります。

またベンゾジアゼピン系の特徴として、投与を中止した後はせん妄を起こしやすいといった副作用があります。

鎮静による血圧低下などの循環抑制がプロポフォールと比べて少ないので、ショック状態などの患者さんの鎮静管理に用いられる場合があります。

しかし最近のICUにおいては、長期使用で遷延しやすい、せん妄を起こしやすいという理由からミダゾラムを使用をしない、または使用を短期間にする施設が多くなっています。

プロポフォール・ディプリバン

ミダゾラムと同様の静脈投与用の鎮静薬であり、鎮静作用のみを持つ薬剤であり、鎮痛作用はありません。

特徴として鎮静作用の発現が早く、短期間の投与では投与中断で速やかに覚醒し、長期使用でも比較的効果が遷延しにくいです。

投与中断や減量で覚醒しやすいので、比較的鎮静コントロールのしやすい薬剤と言えます。

最近のICUでは1日1回の鎮静中断による意識状態の評価を行っているので、ミダゾラムよりもプロポフォールでの鎮静が基本となっている施設が多いです。

しかしミダゾラムより血圧低下を起こしやすい薬剤なので注意が必要です。またミダゾラム同様に投与後はせん妄発生のリスクがある事を覚えておきましょう。

プロポフォールは微生物汚染を受けやすいので、感染対策として12時間毎に薬剤の交換を推奨されています。

プロポフォール注入症候群に注意しよう

プロポフォールを高容量で48時間以上投与して場合、不整脈、横紋筋融解症、高カリウム血症などの致死的な不整脈が起こる場合があります。

プロポフォール注入症候群が疑われた場合はすぐに投与を中止することが大切です。

プレセデックス・デクスメドトミジン

鎮痛と鎮静の作用を併せ持つ薬剤。鎮痛の作用は単体では強くないが、プレセデックスを併用することで、他の鎮痛剤の投与量を抑えることは可能。

特徴としては上記の2剤よりも意識レベルの低下が起こらず、呼びかけで容易に覚醒するような鎮静が行いやすいです。また呼吸抑制作用が少ないので患者さんの自発呼吸を温存したままに鎮静が可能なので、人工呼吸器の離脱直前の鎮静や、人工呼吸器離脱後の鎮静に適しています。

またプレセデックスは上記2剤よりもせん妄の発生のリスクが少ないので、プレセデックスを併用した鎮静方法にする事で、ミダゾラムやプロポフォールの投与量を抑える事ができ、結果的にせん妄予防に繋がります。

デメリットとしては血圧低下や徐脈といった循環抑制作用が比較的発生しやすい事です。

フェンタニル・モルヒネ

麻薬性の鎮痛薬であり、シリンジポンプを使用して持続的に静脈注射を行うことで痛みのコントロールを行います。

シリンジポンプを使用する事で、毎時間一定量を投与することができ、痛みがあればシリンジポンプの流量を増量するといった対応ができます。

人工呼吸器患者さんの鎮痛においてはスタンダードな薬剤です。

副作用として呼吸抑制、消化管運動の抑制による嘔吐、イレウスがあります。



D:せん妄の評価と予防

delirium monitoring and managementでせん妄の評価と予防です。

せん妄期間が長くなれば予後が悪くなるという報告があります。

せん妄は不穏を伴う過活動せん妄と、活動量の低下や無気力となる低活動せん妄、そして両者が混じった混合性のせん妄に分類されます。

ICUにおけるせん妄のほとんどは低活動性のせん妄であり、低活動性せん妄のほとんどは見過ごされていると言われています。

せん妄は看護師の経験による判断ではなく、スタッフ全員がせん妄の評価ツールを用いてモニタリングする事が重要です。

せん妄は「急性の意識障害」であり、認知症と違い一日の中で変化がある事が特徴的です。その為ICUに入室した時点から毎日せん妄の評価を行い、バイタルサインのように日々の変動が分かるようにします。

せん妄の評価ツールはICDSCCAM-ICUが主流となっています。人工呼吸器管理中の患者さんならRASS評価も有効です。スタッフが評価方法を統一しておくことが大切なので、自施設で使用しやすいせん妄評価ツールでモニタリングをしましょう。



E:早期離床の援助

early exercise mobilityで早期離床の援助です。

J-PADと呼ばれる『成人の痛み・不穏・せん妄のガイドライン』ではせん妄期間を短縮する有効な薬物治療に関するデータが少ないとあります。

そして同じくJ-PADのガイドラインではせん妄の発症とせん妄期間を減らすため、早期離床を推奨しています。

つまりせん妄の発症に対しては効果的な薬物療法はエビデンスが少ないので、せん妄を発症させないよう予防、特に早期離床が有効であるのです。

早期離床は理学療法士だけの業務ではありません。ICUでも看護師を主体とした早期離床を行なっていきましょう!



F:家族のケア・家族による意思決定

family engagement&empowermentで家族のケア・家族による意思決定です。

最近のICUでは家族を含めてケアを行い、家族とともに意思決定や治療方針の決定を行うことが重要視されてきているため、以前までのABCDEバンドルに家族支援の「F」が加わりました。

以前までICUは面会制限をしている病院が多かったですが、最近はICUの面会制限が緩くなっている傾向にあり、家族とともに治療方針を考える事が多くなったと思います。気管切開や血液透析などの処置が必要となり、家族と共に「どこまで治療を行うか」「急変時の蘇生は行うのか」といった事も考えなければいけません。

ICUは急変となって入室することがほとんどであり、急な状態悪化に家族の不安も大きくなります。

ICU看護師は患者さんだけでなく家族の精神的なケアも必要になっています。

『こんなはずじゃなかった!』と家族が後悔しないように、家族と共に治療を考えていけるようにサポートする事がICU看護師には求められます。



ABCDEFGHバンドルも存在する!?

最近ではABCDEFバンドルに「GH」が追加されたABCDEFGHバンドルでの考え方も存在しているので、参考までに紹介します。

G 良好な申し送り

good handoff communication

ICUでは申し送る項目が多くなり、場合によっては伝達ミスが起きる可能性も高い職場です。

伝達ミスの防止や、申し送りに個人差がでないよう、共通の書類あるいはテンプレートを用いて申し送りが推奨されます。

申し送りに時間をかけるのが大切ではなく、個人差なく、必要な情報の共有を行えるのが大事です。

きちんと情報が伝達できるルールがあるなら口頭での申し送りを省略してもよいと思います。現に筆者の施設では口頭での申し送りを省略しています。

H PICSやPICS-Fについて書面での情報提供

handout materials on PICS and PICS-F

PICSは集中治療後症候群であり、PICS-FのFはfamilyであり、重症疾患でICU入室となった家族の精神的な影響のことです。

とくにキーパーソンとなる家族のストレスは大きいため、家族さんにPICS-Fを知ってもらい自身の休息も必要であることを理解していただく必要があります。

ICU看護師は患者さんだけでなく、その家族のケアも大切であるとされているのです。

まとめ

・ABCDEFバンドルはICUに入室した患者さんの合併症を予防するための考え方。ICUで勤務する医師や看護師なら知っておくべき指針。

・ICU入室による合併症は人工呼吸器期間の延長・せん妄・ICU-AW・PICSなど。これらの予防としてABCDEFバンドルが有効。

・A:毎日の覚醒テスト、B:毎日の呼吸器離脱トライ、C:適切な鎮痛鎮静薬の選択、D:せん妄の評価と予防、E:早期離床の援助、F:家族のケア・家族による意思決定。これらの頭文字を合わせてABCDEFバンドルとなる。

・ABCDEFバンドルの実践は合併症予防に有効。ICU入室期間の短縮に繋がる。病棟が一丸となって取り組む必要がある。

元来ICUは救命が最優先であり、短期的な目標が優先されます。

しかし最近では短期的な成果だけでなく、長期的な成果を期待する考え方になってきています。

患者さんにはそれぞれの生活があり、もとの生活に戻ることを目指した看護を提供することがICU看護師に求められています。