体験談・裏話

麻酔導入後に換気が出来ない!手術看護師をしていて一番怖かったCVCIの話

看護師は命を扱う仕事。ましてや手術室看護師となると患者さんの生命に関わる場面も多いです。

筆者が手術室看護師として勤務していた時も、患者さんの生命が危険となる場面は何度かありました。その中でも一番怖かったのが『CVCI』です。CVCI(cannot ventilate cannot intubate)とは、換気挿管困難であり、手術室の麻酔導入の場面で最も怖いとも言われている状態です。

全身麻酔では患者さん自身で呼吸が行えないようになるので、気管挿管を行う必要があります。全身麻酔を行い、患者さんの意識が消失した状態で気管挿管を行うのですが、気管挿管が難しい場合はマスクで換気を行います。

しかしそのマスク換気も行えない場合はCVCIとなり、ただちに何らかの方法で換気を行わないと呼吸が行えないので心停止に至る場合もあります。

そんな恐ろしいCVCIに遭遇した体験を記事にしました。

全身麻酔後に挿管・換気ができない!

筆者が看護学校卒業後、手術室に配属され3年が経った頃、いつものように全身麻酔の手術を担当していました。

いつもと同じ麻酔導入、そう思っていました。しかし全身麻酔を開始して麻酔科医がマスク換気を行うも、なかなか胸郭が上がらない。マスクの持ち方を変えてみるも換気が難しい様子、と言うより換気ができていない。

そう思っていると、みるみるうちにSPO2は80%、70%と低下していきます。麻酔科医が『挿管します』と、挿管にトライするも挿管も難しい状況でした。

何とかしなければいけない状況。それは分かっているのですが、筆者はどうしていいか分からず、ただ下がっていくSPO2を見ているだけでした。その時麻酔科医が『隣の〇〇先生を呼んで!』と指示を出したので、金縛りが解けたように他の手術室へ応援を呼びに行きました。



初めて知ったCVCIという状態

 

隣の手術室に入ると、ベテランの麻酔科医が筆者の慌てた様子を見て何かあったと気づいた様子。

筆者が『あの、挿管も換気もできなくて…』そこまで言うと、ベテラン麻酔科医は『CVCIか!』と急いで応援に駆けつけてくれました。

ベテラン麻酔科医も換気・挿管を試みるが上手くいきません。そして『緊急気管切開をします!すぐに準備して!』と直接首に穴を開け、そこから換気を行うようにする気管切開を行うことになりました。

心停止!?緊急気管切開でなんとか一命を取り留めた患者さん

手術室ということもあり、すぐに気管切開を実施しますが、患者さんの心拍数が減少し、一時心停止状態になりました。

外科医師が胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行っていると気管切開が終了し、首から直接挿管用のチューブが挿入されました。

換気を開始すると心拍数も元に戻り、患者さんは一命を取り留める事ができました。その後手術は中止となり、患者さんは集中治療室へ搬送されましたが、脳に障害も無く無事に気管切開の穴も塞ぐ事ができました。



CVCIの原因は麻酔薬の副作用である鉛管現象

術前検査では換気も挿管も問題ないとされていた患者さんがなぜCVCIになったのか?それは麻酔薬の一つである『レミフェンタニル』の副作用による鉛管現象だったのです。

鉛管現象は筋硬直が起こるので、挿管や換気が困難となる現象です。対策として、少量の筋弛緩薬を投与して対処する必要があります。

しかし筋弛緩薬は本来マスク換気が行えるのを確認して投与する必要があるので、担当していた麻酔科医は筋弛緩薬をできずCVCIに至ったのです。

滅多にない事だからこそ備えが大切と学んだ

7年ほど手術室で勤務していましたが、CVCIから気管切開に至った症例はこの一回だけでした。

看護師を仕事にしていると、滅多に起きない事だけど、いざ起こると命に関わるという事に遭遇する事があります。看護師は滅多にない事でも、患者さんの命にかかわる事は対応できるようにする必要があるのです。

その後手術室ではCVCIに対応するできるように、麻酔科医と看護師が合同で学習会を定期的に行い、DAMカートと呼ばれる換気挿管困難に対応できる準備を常にする事になりました。

筆者は麻酔導入の時は常に、『もし挿管ができなかったら』と常に最悪のケースを想定するようになりました。いつも同じように行われている処置でも場合によっては命に関わることがあるのだと学びました。

換気挿管困難(CVCI)の対応に関する記事は下記のリンクからどうぞ

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