看護

新人看護師が知っておきたい。全身麻酔後の看護・観察ポイントを解説

外科病棟はもちろん、色んな科で全身麻酔で手術が行われると思いますが、術後は手術の影響はもちろん、全身麻酔の影響もあり看護師の観察ポイントは多いです。

この記事では全身麻酔の術後観察ポイントをまとめてました、是非参考にしてみて下さい。

麻酔の3要素を知っておく

全身麻酔は

  1. 鎮痛
  2. 鎮静
  3. 筋弛緩

の3要素から成り立ちます。手術時では上記の要素が一つでも欠けてしまうと全身麻酔は成り立ちません。

術後にはこの3要素のうち、鎮痛がメインとなります。

また抜管するにあたって筋弛緩がかかっている状態では自発呼吸ができず、抜管した後に鎮静が残っていると自発呼吸が停止する可能がある事を理解しておきましょう。

つまり術後に抜管して帰室した場合は鎮痛が必要ですが、鎮静と筋弛緩は不要となります。しっかりと患者さんの覚醒状態を観察することで、覚醒不良からの舌根沈下などの合併症を起こさないようにします。



全身麻酔後の観察ポイント

覚醒遅延

その名の通り、麻酔からの覚醒(目覚め)が遅延(遅くなる)事です。

原因としては麻酔薬の過剰投与や腎障害、肝障害による麻酔薬の排泄が遅れているなどがあります。

麻酔がかかりすぎている場合は患者さん自身の呼吸である「自発呼吸」が無くなる場合があるので、全身麻酔後の合併症の中では最も怖い合併症かも知れません。

看護のポイント

自発呼吸の消失といった呼吸抑制、舌根沈下による窒息は命に関わる合併症なので、患者さんが術後帰室したらすぐに麻酔からの覚醒具合を評価しましょう。

開眼しているか自分の名前が言えるか離握手(手を握ったり話したり)といった従命動作が可能か、舌出しが可能かという点を評価して行きます。

自発的に開眼するか、呼びかけで開眼するか、という点はJCSやGCSといった意識レベルの評価でも使用される意識レベルの確認方法です。開眼していればよいですが、強い呼びかけでないと開眼しない、または呼びかけしても開眼しない場合は覚醒遅延が疑われるので注意が必要になります。

また開眼していても離握手といった従命動作ができるかどうか確認する事で、しっかりと覚醒しているか、開眼はできるが離握手は不可といったように評価します。

患者さんによっては難聴があるので、覚醒遅延ではなく聞こえていないだけという場合もありえます。評価の際は事前の情報収集が大切です。

舌出しをする理由は?

舌出しとはその名の通り舌をべーっと出すことです。全身麻酔後に患者さんが舌出しをできるが確認する看護師や麻酔科医がいますが、その理由はご存知でしょうか?

知り合いの麻酔科医曰く、自身で舌を出せるという事は舌根沈下のリスクがかなり低いと言えるのです。そういった理由から全身麻酔後に舌出しが可能かを確認します。

低体温・シバリング

術後の低体温はシバリングの原因となり、シバリングとなった場合は通常よりも酸素消費量が数倍~数十倍となるので、シバリングを起こさないようにする対応が必要です。

低体温やシバリングの原因としては、手術中の保温・加温不足でおこる場合と、麻酔薬の影響により、体温のセットポイントが上昇しておこる場合があります。

セットポイントの異常では体温は正常でも寒さを訴えるので、まず加温を行います。同時に薬物療法も有効とされておりクロニジン,ドキサプラムといった薬剤がシバリングに有効であると言われています。

看護のポイント

単純に低体温の場合は電気毛布による加温や点滴の加温装置を使用してあたためます。術後のシバリング予防に加温は有効ですが、暖めすぎには注意が必要です。

ついさっきまで寒いと言っていた患者さんが汗だくで暑いと訴えることもあります。看護師はこまめに患者さんの観察や体温測定が必要です。

嘔気・嘔吐

麻酔薬の影響、特に麻薬の影響により消化管の運動が抑制され、嘔気や嘔吐といった症状が現れることがあります。

看護のポイント

嘔吐は患者さんが不快になるだけでなく誤嚥の原因となるため、患者さんが嘔気を訴えたら顔を横に向け、吐物の誤嚥を予防しましょう。

ガーグルベースンを用意して吐物を受ける用意をし、エリーテンといった制吐剤の投与を行いましょう。

新人看護師さんはすぐに薬剤を投与してよいか迷う場面が多いと思いますが、術後の嘔気や痛みに対しては我慢させるのは最も悪い選択肢だと知っておきましょう。

循環の変動

全身麻酔後に麻酔が残っている場合は、苦痛が少なく血圧は低めになる事が多いですが、麻酔が切れてくると覚醒に伴い痛みや不快感が出現する事から、血圧が上昇する場合があります。

元々既往に高血圧がある場合は、手術の為に降圧薬を内服していない場合があるので、ニカルジピンなどの降圧薬の静脈注射が必要となる場合があります、

看護のポイント

あまりにも高い血圧は、術後の出血のリスクが高まるだけでなく、脳出血などのリスクも上昇します。

術後に高血圧となった場合は、まず不快や痛みなどが無いかアセスメントを行います。痛みがあれば鎮痛剤の投与といったように、原因の除去を目指しましょう

気道分泌物の増加

全身麻酔中は呼吸抑制されている事によって、自身では痰の喀出ができない状態となっているので、痰や分泌物が貯留しやすい状態となっています。

また挿管チューブが留置されていた事による気道への直接刺激による気道分泌物の増加が原因となって、術後は痰が出やすい状態になっています。

看護のポイント

上述した覚醒遅延の状態では痰や気道分泌物が増加しているのに、自身で痰の喀出ができないと窒息の原因となる場合があります。

術後は痛みによって自身で痰の喀出ができない場合もあるので、看護師は痰が多いか少ないか、自身で痰の喀出ができるかできないかといったアセスメントを行うようにしましょう。

せん妄

手術直後でせん妄となる場合があります。せん妄とは一過性の意識の障害であり、注意力の欠如(ルート類の抜去、ドレーンを引っ張る等)や認知機能の障害(今居る場所が分からない、自分が手術をした事を覚えていない)といった症状が現れます。

術後せん妄の発症要因としては高齢、認知症などの間接的な原因に、手術侵襲や麻酔薬の使用といった直接的な原因が加わり術後せん妄を発症します。

看護のポイント

手術によるストレスと合併症を少なくすることが術後せん妄は難しいですが、痛みや不快感の除去に努めて、誘発因子を減少させることが術後せん妄を予防することに繋がります。

また術直後だけでなく、術後1日目以降にせん妄となる場合も多いので、睡眠、覚醒のリズムを整えたり、早期離床を進めていく事がせん妄予防に繋がります。特に早期離床はせん妄予防のエビデンスが強いので、看護師は理学療法士だけに任せずに早期離床に努めるようにしましょう。

せん妄となった場合はドレーン等の抜去のリスクがあるため、薬剤投与や場合によっては身体抑制が必要となる事があります。身体抑制はせん妄を悪化させる原因にもなるので、なるべく使用せず観察を強化する事が大切です。

いざせん妄になると対応が大変なので、せん妄は予防が大切です。



覚醒遅延ならどう対応する?

覚醒遅延の観察が重要である事を知っている看護師は多いと思いますが、実際に覚醒遅延となった場合はどう対応するべきでしょうか?

ここでは実際に筆者がおこなっている対応を紹介したいと思います。

医師への報告

執刀医や麻酔科医は術後の経過を知っていますが、執刀医はそのまま術後に別の手術を担当したりして不在の場合があると思います。病棟の担当医は患者さんが覚醒遅延である事を知らない場合は報告する必要があります。

医師が知らないと、いざという時の対応が遅れるので必ず病棟の担当医に報告するようにしましょう。

ヘッドアップ

覚醒遅延時は意識レベルが低下しているので吐物や気道分泌物の誤嚥のリスクが高いです

ヘッドアップは舌根沈下を予防すると共に、臥床時よりも誤嚥の予防に繋がります。

気道確保

全身麻酔後に枕を使用していない理由はご存知でしょうか?枕を使用すると、しない場合と比べて舌根沈下のリスクが高くなります。

誤嚥の予防でヘッドアップを紹介しましたが、枕で頭を上げると気道閉塞のリスクが高くなるので必ずベッドでのヘッドアップを行いましょう。

舌根沈下によって気道が狭くなるといびき様の呼吸や無呼吸状態となって表れます。このような場合は頭部後屈顎先挙上法によって気道の開通を図ります。

また単純に側臥位になれば舌根沈下が起きにくいので、側臥位にして医師の到着を待ちましょう。

エアウェイ

舌根沈下に対しては経鼻エアウェイや経口エアウェイといった気道確保方法が選択される場合があります。

場合によってはラリンジアルマスクを挿入する場合もあります。

リバース

フェンタニルなどの麻薬は呼吸抑制作用があるので、麻薬の拮抗薬であるナロキソンなどを投与することで麻薬の効果を打ち消します。この拮抗薬はリバース薬とも呼ばれます。

ナロキソンの投与で覚醒したとしても、ナロキソンの効果が切れると再度呼吸抑制となる場合があるので、リバース薬投与後も継続しての観察が必要です。

挿管の準備

上記の対応でも難しい場合は再挿管となります。

看護師はいつでも挿管ができるようにスタンバイしておきましょう



まとめ

・全身麻酔後の観察ポイントは「覚醒遅延」「シバリング」「嘔気・嘔吐」「循環の変動」などの有無。

・覚醒遅延は「自発呼吸の消失」や「舌根沈下」など命にかかわる場合があるので、注意が必要。

・覚醒遅延に対しては気道確保や誤嚥の予防が必要。場合によってはエアウェイの留置や再挿管の準備を要する。

全身麻酔は患者さんにとって侵襲的な行為であり、看護師は全身麻酔後にバイタルサインの変動や意識レベルの変動など様々な観察が必要となります。

覚醒遅延からの舌根沈下といった命に関わる合併症もあるため、全身麻酔後は看護師による観察が重要となります。術後は経過が変わりやすいのでこまめな観察を心がけましょう。

観察をこまめに行い、しっかりとアセスメントする事で急変を予防する事に繋がります