看護

アスピレーションとトロッカーの違いとは?胸腔ドレーンの看護・観察ポイント

看護師にとってドレーン管理は重要な看護の一つですが、苦手としている看護師さんも多いのではないのでしょうか?特に胸腔ドレーンは水封や低圧持続吸引など難しい要素が多いと思います。

この記事では集中治療室で看護師をしている10年目看護師が、胸腔ドレーンの看護や観察ポイントについてまとめました。新人看護師さんだけでなく、中堅看護師さんも是非参考にしてみてください。

胸腔ドレーンの目的

まずは胸腔ドレーンの目的です、主に以下の二つです。

1.疾患や手術の影響で胸腔内に溜まった液体(膿、血液、浸出液)を体外へ排出する。

2.開胸手術や気胸などで、胸腔内が陽圧になっている場合に空気を体外へ排出する。

1.は術後や膿胸、胸水などで適応となります。

胸腔内には正常でもごく少量の胸水が存在しますが、多量の液体が貯留すると肺の膨張を妨げるので液体をドレナージする目的で行われます。

また膿胸(のうきょう)と呼ばれる、感染によって胸腔内に膿が貯留した状態でも、胸腔内の膿を排出する目的でドレーンを留置します。

 

2.は胸腔内は常に陰圧であり、呼吸は胸腔内の陰圧を強くすることで肺へ空気を取り込んでいます。

肺に穴が開いてしまうと空気が漏れる(エアリーク)ので、胸腔内の陰圧が保てなくなり肺が膨張できなくなるのです。

肺が膨張できなくなり縮むことを肺が虚脱するというのですが、その虚脱を改善して再膨張を促す目的で行われます。

ちなみに肺に穴があいている状態を『リーク』や『肺瘻(はいろう)』と表現します。

気胸や胸水は程度によってはドレーンを留置しない事もありますが、開胸手術では基本的に胸腔ドレナージを行います。

胸腔ドレーンの目的は

①胸水や膿などの液体を排出する

②気胸などで溜った空気を排出する

の大きく二つである。



胸腔ドレナージ用のチューブの種類

胸腔ドレナージ用のチューブの種類は①アスピレーションカテーテル、②トロッカーカテーテル、③胸腔ドレーン(内筒なし)の3種類です。それぞれの特徴を解説します。

アスピレーションカテーテル(アスピレーションキット)

画像引用元:カーディナルヘルス トロッカーアスピレーションキット

 

トロッカーカテーテルと比べてチューブが細く、キット化されているので器具や物品を用意する物が少ないというメリットがあります。

アスピレーションカテーテルは経皮的に挿入しますが、チューブの経が細いので挿入しやすく、挿入時の合併症や痛みが少ないです。トロッカー留置に慣れていない医師でも、アスピレーションカテーテルなら留置しやすいというメリットがあります。

しかしカテーテルの経が細いので、大量の胸水や膿胸の時はカテーテルの閉塞する可能性が高くなります。膿胸の場合は基本的にトロッカーカテーテルなどの径の太いチューブが選択されます。

アスピレーションバルブという一方弁があり、逆流しないという特徴があります。なのでアスピレーションバルブを装着していれば、持続吸引の無い普通のドレーンバッグに接続してもOK(水封が不要)ということになります。

画像引用元:日本コヴィディエン株式会社取り扱い説明書

延長チューブにはクレンメがついています。排液するときはクレンメを閉じることで、安全に排液が可能になっています。クレンメが閉じているとドレナージができないので、クレンメが閉じたままになっていないかを必ず観察するようにしましょう。

ちなみにアスピレーションバルブを装着したまま低圧持続吸引の圧をかけると一方弁が閉塞して緊張性気胸が発生する恐れがあります。持続吸引を開始する時は、必ずアスピレーションバルブが外されている事を確認しましょう。

・径が細いので、主に気胸に使用される。膿胸には使用しにくい。

・キット化されているので、準備物品が少なくてすむメリットがある。

・アスピレーションバルブは一方弁がなので、水封管理が不要。持続吸引開始時はアスピレーションバルブを外す。

トロッカーカテーテル

画像引用元:ニプロ トロッカーカテーテル

アスピレーションカテーテルと同じく経皮的に挿入するカテーテルです。

金属製の内筒があるので、経皮的に挿入しやすくなっています。デメリットとして穿刺時の肺損傷のリスクがあることと、カテーテルが太いので留置時の患者さんの苦痛が強いことです。

アスピレーションカテーテルより径が太いので、血胸や膿胸といった粘度の高いものでも閉塞しにくいメリットがあります。また状況に応じてカテーテルの径を選択できます。

アスピレーションカテーテルのようにロックが付いていないので、クランプする時はクランプ鉗子を使用する必要があります。

アスピレーションカテーテルとは違い、一方弁が装着されていないので、水封での管理が必要となります。

・径が太いので膿胸や血胸に使用する。

・水封での管理が必要

胸腔ドレーン(内筒なし)

画像引用元:ニプロ ソラシックカテーテル

トロッカーカテーテルと同じく径を選択できますが、内筒がないので経皮的に挿入するのに適していません。ソラシックドレーンやブレイクシリコンドレーンなど、手術後に使用されるドレーンを総じて胸腔ドレーンと呼びます。

ドレーンの挿入方法が異なるだけで、管理方法はトロッカーカテーテルと同じです。



ドレーンバックの種類

ドレーンバッグは主に『メラサキューム』と『チェストドレーンバッグ』の2種類があります。

両者とも持続吸引ができるのですが、それぞれに特徴があるので詳しく解説します。

メラサキューム

画像引用元:MERA 電動式低圧吸引器 サキューム009

メラサキュームは、『メラアクアシール』という排液バッグと接続して使用する、『電動式低圧吸引器』です。

電動式の為、吸引圧は機械で制御することができます。使用時は水封用の蒸留水を注入する必要があります。

機械で吸引圧を制御してくれるので便利ですが、電源を必要とする(バッテリーはあり)、装置が大きいので移動の際は不便、といったデメリットもあります。

低圧持続吸引が不要な場合は、電源を切れば水封のみで管理する事ができます。

チェストドレーンバッグ

画像引用元:PMDA 医薬品医療機器総合機構 チェスト・ドレーン・バック(一体型)

チェストドレーンバックはメラサキュームと違い、機械で吸引圧を制御できません。その為吸引制御ボトルの水量で吸引圧を調整します。

吸引制御部と水封部の2箇所に蒸留水を注入する必要があります。その為吸引制御部は黄色、水封部は青色に変化します。

チェストドレーンバックは吸引配管へ直接繋いで使用します。水封のみで管理するならば、吸引配管の接続は不要です。



ドレーンバックの仕組み

ドレーンバックは3つの部屋に分かれます。メーカーによって多少配列が異なりますが、基本的な構造は同じです。

排液ボトル

患者さんの胸腔内と繋がっている部分であり、胸腔内の血液や浸出液はこの排液ボトルへと移動します。気体は隣の水封室へと流れていきます。

排液ボトルが最も大きく、約2000MLほど排液を貯留する事ができます。チェストドレーンバッグは一体型のバッグでなければ、排液ボトルのみ交換が可能です。メラサキューム用のドレーンバッグであるメラアクアシールや、一体型のチェストドレーンバッグの場合は、排液室がいっぱいになればドレーンバッグごと交換が必要です。

水封室(ウォーターシール)

チェストドレーンバッグなら『青色』の場所です。

真ん中の部屋で、胸腔内からの空気を排出する役割と、外気が胸腔内へ逆流しないようにする一方弁の役割があります。

水で蓋をしている状態、プールの中では空気は外へ排出されるけど中には入らないイメージです。水を使った一方弁になっているので水封と名付けられています。

胸腔内は常に陰圧なので、適切な水封管理がされていないと胸腔内へ空気が逆流します。

その結果、肺が圧迫され呼吸状態が悪化したという医療事故も発生しているので、看護師による水封の確認はとても重要な役割です。

吸引圧制御ボトル

チェストドレーンバッグなら『黄色』の場所です。ここの水位によって吸引圧を調整する事ができます。

陰圧制御管によって、吸引圧がかかりすぎても外気を取り込んで、吸引圧が一定に保たれるような仕組みになっています。

機械で吸引圧制御するメラサキューム用のメラアクアシールには、吸引圧制御ボトルはありません。



ドレーンの観察ポイントと看護

胸腔ドレーンを留置している患者さんの観察ポイントや看護を解説します。

ドレーン刺入部

出血の有無、皮膚トラブルがないか、固定はしっかりとされているかを観察しましょう。

固定は体幹部への確実な固定が必要です。固定が緩いと、体位変換や離床の際にドレーン抜去の可能性もあります。

ドレーンと皮膚にマーキングをすることで、ドレーンの抜けがすぐに分かるようになります。必ずマーキングを行なうようにしましょう。

皮下気腫の有無

皮下気腫とは、皮下組織に空気が入り込んだ状態です。特徴としては押すと「プチプチ」と空気のつぶれる感触です。

胸腔内の空気のドレナージが不十分の場合に、皮下気腫として出現する事があります。皮下気腫があればバイタルサイン、とくに呼吸状態に異常が無いかを観察します。皮下気腫は必ずマジックでマーキングを行い、拡大が無いかを観察できるようにします。

胸腔内の空気が排出できていない可能性もあるので、水封部のエアリークがあるかを確認し、必ず医師へ報告しましょう。

ドレーン留置部周囲は空気が入り込みやすくなるので、皮下気腫が起こりやすいですが、拡大が無ければ経過観察でよいことが多いです。

ドレーン排液の量と性状

排液の性状や量の変化の有無を観察をします。術後や血胸の場合、基本的にはドレーン排液は血性→淡血性→漿液性と変化し、排液量も減少していきます。

術後に血性の排液が多ければ、術後出血の可能性があります。また排液が急に無くなった場合は、ドレーン閉塞の可能性があります。看護師はドレーンの性状や量から、状態をアセスメントする事が大切です。

膿胸では排液が膿性の場合はドレーン閉塞のリスクが高いので、しっかりとミルキングが必要です。

持続吸引中ではチューブ内に排液が貯留していると設定通りの圧がかからないので、看護師はしっかりと排液をドレーンバッグへ誘導することが大切です。

呼吸性変動(フルクテーション)

水封部の水面が、呼吸に伴って上下することを呼吸性変動(フルクテーション)といいます。

呼吸性変動はドレーンが胸腔内に繋がっている為に起こるので、胸腔ドレーンの観察において呼吸性変動は重要です。呼吸性変動があるということは、ドレナージが適切に行えているということです。

呼吸性変動が無ければ、ドレーンの閉塞やドレーンが抜けている可能性があります

持続吸引をしている呼吸性変動が分かりにくい場合もあります。分かりにくい時は、一旦持続吸引を止めて観察する必要があります。

エアリーク

気胸などで肺に穴が空いている場合は、水封部にブクブクと空気が発生します。これをエアリークと呼びます。

このエアリークを観察することで肺の穴が塞がっているかどうかを判断します。

エアリークは有無だけでなく、『常にエアリークがあるか』『呼気時のみにエアリークがあるか』『咳嗽時にエアリークがあるか』など、どういった状況でエアリークが起こっているかも観察しましょう。

咳嗽時にはもっとも肺に圧がかかります。つまり気胸でドレーンを留置している場合は、咳嗽時にエアリークが無ければ、肺の穴(肺瘻)がふさがっていると判断することができます。

呼吸性変動あり、エアリーク無しが理想の状態です。呼吸性変動もエアリークも無い場合は、ドレーンの留置位置に問題があるかもしれないので、医師へ報告が必要です。

ドレーンバッグのリークに注意

エアリークがあれば肺から空気が漏れている可能性がありますが、ドレーンバッグなどの異常でもエアリークが発生する場合があります。

ドレーンと排液ボトルの間をクランプしてもエアリークが発生する場合は、ドレーンバッグ側にリークがあるということです。

クランプしてエアリークが止まれば、患者さん側でリークが発生していると判断できます。

排液ボトルの交換方法

排液ボトルがいっぱいになれば交換を行ないます。排液ボトルの交換は、必ずドレーン接続部を清潔に取り扱いましょう。

排液や空気の逆流を防止するため、ドレーンを2箇所でクランプして交換します。

接続外れに注意

ドレーンとバッグの接続が外れると、胸腔内に外気が取りこまれたり、胸腔内の感染のリスクが高くなります。

肺からの空気の漏れが胸腔内に貯留したり、胸腔内に空気が流入し健側の胸腔を圧迫して循環、呼吸障害を起こすことを緊張性気胸といいます。

緊張性気胸は心タンポナーデに似て、心拍出量の低下やチアノーゼを引き起こし、緊急の対応が必要となるので、ドレーンの接続外れや閉塞などには十分注意する必要があります。



ドレナージの方法

間欠的ドレナージと持続的ドレナージの2つの方法があります。

間欠的ドレナージは留置針やアスピレーションキットで一時的に留置します。
胸水の採取や排出の為に行われ、胸腔穿刺とも呼ばれます。

持続的ドレナージは低圧持続吸引器などに接続してドレナージする方法です。

 

まとめ

・アスピレーションカテーテルは径が細く、気胸などの脱気目的に使用される。

・トロッカーカテーテルは径が太く、膿胸などの排液目的に使用される。

・メラサキュームは機械で吸引圧を調整し、チェストドレーンバッグは吸引ボトルの水量で吸引圧を調整する。

・水封は空気が逆流しない、一方弁の役割はある。水封がないと呼吸状態の悪化につながるので注意する。

・ドレーンは必ずマーキングを行なう。皮下気腫はマーキングしておけば拡大が分かりやすい。

・エアリークや呼吸性変動を観察する事で、胸腔内の状態がわかる。

水封や呼吸性変動などの特有の単語が登場しますが、しっかりと理解すれば難しくはないです。

ドレーンのトラブルは患者さんに近い立場である、看護師が発見できるように管理方法を理解しておく必要があります。

ドレーン管理は性状や量などが気にされがちですが、接続外れや閉塞などの管理のトラブルが患者さんに影響を及ぼすので日々の点検が大切なのです。