看護

ICUにおける気管挿管と気管切開の違い。気管切開への移行タイミングは?

看護学校では学ぶ機会が少ないのが気管挿管や気管切開であり、看護師になってから初めて気管切開の患者さんを見る人もいるのではないのでしょうか?

なかなか学生時代に学ぶことができず、看護師になってからも看護ケアで悩む新人看護師も多いと思います。

この記事ではICU看護師の筆者が気管挿管と気管切開の違いについてまとめてみました。新人看護師さんや異動した看護師さんは是非この記事を参考にしてみて下さい。

気管挿管と気管切開の違い

どちらも自身で呼吸ができない、あるいは人工呼吸器で呼吸を補助する必要がある患者さんに行われる処置です。

気管挿管は口(あるいは鼻)から気管へチューブを留置する事で、人工呼吸器などでの換気を可能とします。

気管切開は喉を切開し、そこから気管へ直接チューブを留置する処置です。

気管挿管の特徴

気管挿管は口あるいは鼻からチューブを挿入するので、気管切開と違って皮膚を切開する必要はありません。

その為呼吸状態が悪化して人工呼吸器が必要となった場合は、まず気管挿管を行う事がほとんどです。

気管挿管中は口から喉にかけて管が入っている状態なので苦痛を伴いますので、鎮静薬や鎮痛薬による管理が必要になります。

もちろん食事をする事はできませんし、チューブ抜去のリスクがある為、リハビリテーションも制限がかかります。チューブを固定するテープによる皮膚トラブルや、口腔ケアがしにくい事による口腔内のトラブルが起こりやすいです。

その為長期に気管挿管が必要となる場合は気管挿管から気管切開へと移行するようにします。

気管挿管の特徴まとめ

口あるいは鼻からチューブを留置する

苦痛を伴うので鎮静や鎮静薬が必要となる

リハビリテーションに制限がある

長期留置となるなら気管切開へ移行する

気管切開の特徴

気管切開は喉を切開し、そこから直接チューブを留置する方法です。

気管切開術という処置が必要となりますが、気管切開後しばらくすれば気管切開の穴がしっかりと開通するので(これを瘻孔化といいます)気管チューブの入れ替えが容易になります。

瘻孔はピアスの穴と同じようなものと考えて貰えるとわかりやすいと思います。切開後の痛みはありますがしばらくすれば痛みは消失していきます。

気管挿管と比べ

  • チューブの長さが短いので痰を吸引しやすい
  • 食事や飲水が可能
  • 体動時の苦痛が少ないのでリハビリテーションが行いやすい

というメリットがあります。

また発声する事が可能な特殊なチューブがあったり、気管切開が不要となれば穴を閉じることも可能となっています。

気管切開のまとめ

喉を切開して直接チューブを入れる

気管切開後しばらくすれば穴がしっかりとするのでチューブの入れ替えが容易

気管挿管と違い、吸引がしやすい、食事が可能、苦痛が少ない、リハビリがしやすい

不要となれば気管切開孔の閉鎖が可能

気管挿管から気管切開へ移行するタイミングは?

気管挿管が長期になるなら気管切開へ移行する必要がある事を説明しましたが、ではいつ頃気管切開するべきでしょうか?

実は一概に「気管挿管から〇日目に気管切開をする」といったように具体的には決まっていません。というのも患者さんの状態によって気管挿管のチューブを抜く(チューブを抜く事を抜管と言います)場合もあるので、すぐに気管切開を行う訳ではありません。

気管切開は侵襲的な処置であり、場合によっては延命処置と捉えられます。気管切開には家族の同意が必要なので、場合によっては家族が意思決定をするまで時間がかかる場合もあります。なので気管切開へ移行するタイミングは患者さんによって異なります。

しかし気管挿管は長期になると痰によるチューブの閉塞や口腔粘膜や気道の障害などのデメリットが大きくなるので、約2週間を限度に気管切開へと移行する場合が多いです。

患者さんの状態によって気管切開へ移行するタイミングが変わる

気管挿管は2週間以上になるなら気管切開へと移行する場合が多い

 

気管切開のメリットが多いなら早期に気管切開するべき?

ここまでの話だと気管切開の方がメリットが多いように思われますが、気管切開は早期にする場合(7日以内)と2週間前後にする場合はどのような差があるのか解説します。

早期の気管切開は

  • 人工呼吸器からの離脱が早いとされている
  • ICU滞在日数が少ない
  • 早期にリハビリテーションが行える
  • 口腔内や口腔周囲のトラブル少なくなりやすい

といったメリットがありますが、後に抜管できるかもしれない患者さんに対して気管切開をしてしまうというデメリットがあります。

つまり早期の抜管が不可能な疾患の場合は、早期に気管切開をした方が患者さんにとってメリットが大きいといえます。

早期の気管切開はメリットが多いが、抜管できるかもしれない患者さんに対しても気管切開を行ってしまう場合がある

ちなみに早期の気管切開と2週間前後気管切開では予後に変わりは無いとされています。

最近の気管切開の方法は?

気管切開術と聞くと、電気メスなどを使用して手術のように行う事を想像されると思いますが、最近の気管切開は気管支鏡と呼ばれる細いカメラを挿管チューブから挿入する事で、セルジンガー法というCVカテーテル留置のように低侵襲な方法で行えるようになっています。

低侵襲なセルジンガー法

まずは22G程度の針で局所麻酔&試験穿刺

ガイドワイヤーを通す

ダイレーターで穴を拡張

気管切開用カニューレを留置する

まとめ

・気管挿管は切開しなくていいが、鎮静剤が必要であったりリハビリに制限がかかることがある。気管切開は切開が必要だが、チューブ交換が容易になり食事摂取も可能となる。

・気管挿管は2週間以上になれば気管切開へ移行する場合が多い。

・早期の気管切開はメリットが多いが、抜管できる可能性のある患者さんに対しても気管切開を行なってしまうかもしれないデメリットがある。

気管挿管や気管切開はICUではよく行われる行為なので、ICUで勤務するならぜひ理解しておきたいですね。

気管挿管と比べ、気管切開はメリットが大きいですが皮膚の切開が必要となります。医学的な面だけではなく、患者さん本人や家族の意向も汲み取る必要があります。