看護

新人看護師が知っておきたい、急変発見のポイントやCPR時の動き方

新人看護師さんにとって不安なことと言えば『急変対応』だと思います。急変に当たったことがある人も、ない人もいるとは思いますが、いつ起こるかわからないだけに不安ですよね?

いざ急変に遭遇すると誰でも動揺してしまいます、それが経験年数の少ない看護師ならなおさらだと思います。

この記事ではICU看護師である筆者が急変時の対応について記事にしました。新人看護師さん向けに書いてみたので是非参考にしてみてください。

 

まずは急変に気付くための観察が必要

急変とは『病状が大きく変化すること』であり、その経過は様々です。急変対応とは、まず急変に気付くということから始まります。

常にモニタリングを行っている患者さんばかりでは無いので、看護師の気付きや観察が大切です。

特に急変時の発見は「何かがおかしい」といった違和感で気付くことも多いので、血圧や脈拍といった数値も大切ですが、患者さんの見た目』も重要な観察ポイントです。

 

 

1.見た目・外見の評価

まずは外見の評価が大切です。急変時にだけ観察するのでなく、普段からの観察が急変の早期発見につながります。

急変時の対応に目が行きがちですが、急変の早期発見が何よりも大切であることを認識しておきましょう。

外見の観察ポイント

顔色:蒼白・紅潮など

意識:意識が無い・意識レベルが低下しているなど

皮膚:チアノーゼの有無・発汗など

呼吸状態:下顎呼吸・無呼吸など

全体:痙攣や硬直の有無・窒息の形跡はないかなど

 

これらを第一印象で観察します。

頭から足先へ向かって観察を進めていくとスムーズに行えます。

この観察で異常があれば急変と判断し、すぐに応援を要請しましょう。

なるべく時間をかけずに観察し、すぐに次のABCの評価へ移行します。

 

2.ABCの評価

外見の観察を瞬時に行ない、異常の有無に関わらずそのままABCの評価を行います。

 

ABCの観察ポイント

A:気道(Airway) 気道が開通しているか、音や息で確認する

B:呼吸(Breathing) 呼吸数、呼吸様式、呼吸困難や努力呼吸

C:循環(Circulation) 脈は触れるか、末梢冷感は無いか

 

ABCの評価は1つずつせず、同時に評価ができるようになりましょう。

ABCで異常があればすぐに応援を要請しましょう。ABCのA(気道)に異常があればすぐにBLSを開始します(詳しくはBLSのアルゴリズムで解説しています)。



急変時の初期対応

上記の評価に該当する場合は応援を呼んで対応します。

まずは人手を確保するのが大原則です。急変を発見しても1人では蘇生は行えません、必ず人を呼ぶようにしましょう。また夜間帯ではスタッフの人数が少ないため、エマージェンシーコールで他病棟から応援を借りるようにしましょう。

人を呼ぶべきか悩む場面もあると思いますが、悩んだ場合は人を呼びましょう。一番いけないのは悩んでいて時間が過ぎてしまう場合です。心肺停止の場合は、早期に蘇生を開始すれば救命率が上昇するので、悩むくらいなら助けを呼ぶことを覚えておきましょう。

そして呼吸停止があればすぐに胸骨圧迫を開始します。胸骨圧迫の方法や開始する判断は下記の「BLS・ALSを理解しておこう」で紹介します。

急変を発見した場合、まずは応援を呼ぶ。応援を呼ぶか悩むくらいなら、応援を呼ぶ。

エマージェンシーコールの方法を知っておこう

コード○○」「ドクターハート」と言ったような、全館放送される緊急コールです。

新人看護師であっても、必ず自分の施設でのエマージェンシーコールの方法は覚えておきましょう。「新人だからわかりません」とならないように、メモの表紙などに記載しておきましょう。

 

BLS・ACLSを理解しておこう

BLS:一時救命処置

Basic Life Supportの略で、特別な器具がなくてもできる心肺蘇生法のこと。急に倒れた人に対して近くにいる人が、救急隊や医師が到着するまでの間に行う応急処置。

ACLS:二次救命処置

Advanced Cardiovascular Life Supportの略で、医師や救急隊による、気道確保(気管挿管)、心電図モニター、除細動器などを用いた高度な蘇生方法。

急変の対応を知りたいのなら、BLSとALSを理解しておくことが大前提です。なぜなら医師も看護師もガイドラインに沿って心肺蘇生を行うので、ガイドラインを理解することは急変時のマニュアルを理解していることになります。

病院ならALSによる救命を行いますが、ALSによる救命は医師などの応援の到着が不可欠です。応援が到着するまでの間はBLSを行うことになるので、BLS・ALSともに理解しておきましょう。

BLSのアルゴリズム

 BLSのアルゴリズム

看護roo!これで動ける!急変時対応https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1932より引用

患者さんに反応が無ければ、ABCの評価として呼吸と頸動脈の触診を行います(できれば同時に)。

  • 患者さんの口元に耳を近づけて呼吸があるか確認する。
  • 胸郭の動きを確認し、呼吸の有無を確認する。
  • 頸動脈が触知出来るか確認をする。

正常な呼吸が確認できない場合は、すぐに胸骨圧迫を開始します。胸骨圧迫を続けたまま、ACLSチームへ引き継ぎを行います。

呼吸が正常な場合は気道を確保(頭部後屈顎先挙上法など)し、ACLSチームの到着を待ちましょう。

 

ACLSのアルゴリズム

ACLSのアルゴリズム

看護roo!これで動ける!急変時対応https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1932より引用

ACLSのチームが到着すればチームリーダーを決定し、気管挿管などを用いた高度な呼吸管理、血管収縮薬や抗不整脈薬を用いた循環管理などを行います。

 

ACLSによるCPR(心肺蘇生)の流れ

  • 胸骨圧迫30回に対し、バッグバルブ換気は2回を繰り返す(30:2)。気管挿管後は非同期となるので、胸骨圧迫は中断せずに絶え間なく行なう。
  • 2分ごとにリズムチェックを行う。チームリーダーがモニターの波形を確認し指示を出す。リズムチェックの際は一旦胸骨圧迫を中断、中断は最小限にしリズムチェック後はすぐに胸骨圧迫を再開する。
  • 3~5分毎にアドレナリンの投与および生食20mlでの後押しを行なう。わかりやすく4分毎にしている施設が多い(4分毎だと、投与後2回目のリズムチェックでの投与になる)。
  • 波形がVF/無脈性VTの場合は除細動によるショックを行なう。ショックは二相性の除細動器なら150J(ジュール)~200Jで行なう。ショック前は全員が患者さんから離れることを確認する。ショック後はすぐに胸骨圧迫を開始する。
  • VF/VTには抗不整脈薬(アミオダロンやニフェカラント)の投与を行なう。アミオダロンはアンカロン、ニフェカラントはシンビットという商品名の場合があります。
  • PEA(無脈性電気活動)やASYSTOLE(心静止)の場合は除細動や抗不整脈薬の適応が無いので、絶え間ない胸骨圧迫とアドレナリンの4分毎の投与を行なう。

胸骨圧迫の中断は最小限にする

2分毎にリズムチェック、4分毎にアドレナリン投与

VF/VTなら除細動・抗不整脈薬の適応となる

PEA・ASYSTOLEは除細動・抗不整脈薬の適応とならない



CPR時の看護師の動き方

では上記のACLSのアルゴリズムを理解した上で、看護師の実際の動き方を解説したいと思います。

人が集まってきたら役割分担が必要です。皆が皆考えて動けるなら良いですが、経験の浅いスタッフには指示を出す必要があります。

効率良く蘇生を行なう為にも必ずリーダー係を決定します。リーダー係は医師がおこなうと思いますが、医師が到着するまでの間は看護師が指示を出してもよいです。

 

自分がリーダー的な立場なら、わかりやすく指示を与えるのが重要です。

記録・胸骨圧迫・換気など、役割を決めて効率的に動くことが必須です。

とにかくいち早く救急システムを立ち上げることが重要だと認識しておきましょう。

 

救急カート・除細動器のスタンバイ

どんな名医であっても道具が無ければ蘇生は難しいです。ACLSにおいて救急カートと除細動器は必須なので必ず準備をします。

救急カートは持って行くだけでなく、バッグバルブマスクの用意やアドレナリンや後押し生食の用意も一緒に行ないます。もちろん気管挿管の準備もしておきましょう。

除細動器も持って行くだけでなく、電源をONしてモニター装着し、除細動用パッドを装着しましょう。

別府市消防本部のホームページより引用

除細動のパッドは右胸の上部・左わき腹と心臓を挟み込むように貼りつけましょう

救急カートは持って行くだけでなく、薬剤投与・気管挿管の準備も行なう。

除細動器は電源を入れて、モニター・パッドを装着する

除細動器のモニター方法を知っておこう

除細動器には赤・黄・緑の電極があり、それぞれを装着する事で心電図をモニタリングを行えます。

装着した後は「リード選択」をする必要があり、誘導は「Ⅱ誘導」を選択するようにしましょう。Ⅱ誘導が一番モニタリングに適している誘導だからです。

ちなみに心電図の電極を装着しなくても、除細動用パッドから心電図を出す「パドル誘導」でモニタリングは可能です。パドル誘導でモニタリングが不安定ならすぐに心電図電極でモニタリングを行いましょう

 

必ず記録係を決める

記録はとにかく大切です。なぜなら万が一裁判などになった場合に証拠は必ず必要です。

意外に抜けてしまうのが記録ですので、誰が記録をしているのか分かるように、「私が記録係をします!」と手を挙げて宣言するようにしましょう。

ACLSに自信が無い新人看護師でも記録ならできると思うので、記録係がいないなら是非手を挙げてみましょう。

 

記録は必ず急変直後から経時記録で記載するようにしましょう。そして時間は電子カルテの時間で記載しましょう。

自分の時計や病棟の時計だと、後でカルテの時間とずれる場合があります。かならず時間をあわせるようにしましょう。

 

記録係は「タイマー役」と兼任することがほとんどです。

タイマーは、CPR時の2分毎のモニターチェック4分間のアドレナリン投与をする為に必須です。必ず毎回タイマーをセットして音が鳴るようにします。タイマーをセットしないと忘れてしまうことがあるので、毎回タイマーをセットしましょう。

2分毎にタイマーをセットし、「2分経過しました、リズムチェックです」と大きい声で言いましょう。

急変時は必ず記録を忘れないようにする!

記録係はタイマーを使って2分毎に声を掛ける。

 

ルート確保・薬剤投与

人手が確保できればすぐにルート確保も必要です。普段のルート確保は前腕などでとる事が多いと思いますが、緊急時なのでとれたらどこでもいいです。

肘部や手背でも大丈夫です、なるべく太い血管にキープしましょう。

 

もともとルートがある場合は生食(あるいは細胞外液)にすぐにつなぎ変えましょう。シリンジポンプなどで側管から薬剤が投与されている場合は、OFFにするかどうかを医師に確認しましょう。

内頚のCVカテーテルを使用する場合は胸骨圧迫の影響で逆血することもあります、そんな時は点滴の高さを上げるか加圧バッグを使用して、とにかくアドレナリンがしっかりと流れるようにすることが大切です。

薬剤投与係は持ち場を離れず、目線はきちんと滴下されているか確認するようにしましょう。

気道管理

人手があったらBVMによる換気も行います。

注意点として、BVMは必ず人工鼻を付けておかないと分解して洗浄しないといけないようになります。

緊急時に人工鼻をつけてから換気は忘れる事が多いので、あらかじめ人工鼻をつけて用意しておくようにした方がよいです。

 

挿管患者さんがCPAになる場合もあります。この場合も人工呼吸器を外してBVMで換気をしてもよいですし、人工呼吸器を装着したままでもよいです。

高濃度の酸素投与が推奨されていますので人工呼吸器の酸素濃度を100%まで上げる必要があります。

CPAPなどの補助呼吸だと、うまく同調しない事があるのでBVM換気に切り替えるか、モードを強制換気に切り替えるなどが必要です。

高濃度の酸素がきちんと投与されていれば、胸骨圧迫だけでも呼吸状態は十分であるという資料もあるのでまずは胸骨圧迫が最優先であり、人手があれば換気へと回るようにしましょう。

胸骨圧迫が長く続けば出血が見られることがあり、特に挿管時はチューブ内に血が溜まって喚起の障害となることがあるので、医師がバッグで換気をしていても看護師は吸引をしたり、CO2モニターを装着したりとサポートするようにしましょう。

胸骨圧迫

胸骨圧迫のポイントは『胸の真ん中を、強く・速く・絶え間なく』押すことです。

・強さ⇒成人は5〜6cm
・早さ⇒1分間に100〜120回のテンポ
・絶え間なく⇒交代も切れ目なくスムーズに行う

またリコイル(圧迫の解除)も重要であり、胸骨圧迫中はしっかりとリコイルができているかもお互いに確認しあいましょう。

家族対応

忘れがちになりますが、家族への連絡は重要です。蘇生コードの確認のためにも家族への連絡は必要です。

家族へ連絡しないままCPRが進んでしまわないように人手が確保できればすぐに家族対応を行うようにします。

また急な連絡で動揺する場合がほとんどです。必ず慌てずに落ち着いて来院するように声掛けしましょう。また到着までどれくらい時間がかかるかも聞いておきましょう。



急変時の報告はSBARでしよう

 

SBAR

S(状況):situation

B(背景):background

A(評価):assessment

R(提案):recommendations

SBARとは的確に短時間で情報伝達するための方法です。急変時だけでなく、普段の医師への上申時などにも使えます。

急変時は簡潔に最大限の情報を伝えるため、SBARに沿って報告するようにしましょう。

医師の返答によっては、疾患名や既往歴を伝えたり、報告する順番が前後する事もあります。

新人看護師さんが報告した後に、医師が「で、どうしたらいいの?」と返答されているケースを見かけます。事実のみを伝えるのではなく、何の為に報告をしているのかを意識しましょう。

また報告は『具体的に』『簡潔的に』を意識しましょう。特に急変時はダラダラと報告するのではなく、必要な情報を具体的かつ簡潔的に報告しましょう。

 

蘇生ができなかった場合

心肺停止患者さんは必ずしも蘇生できる訳ではありません。もちろん蘇生ができない場合もあります。

CPRを終了するタイミングは明確には決まっていないですが、研究の結果で30分を超えると蘇生の見込みがほぼ0になるため、30分を一つの目安にしている施設も多いと思います。

CPRを実施しても蘇生ができない場合は、蘇生の見込みがない事を家族へ説明して蘇生を中止する事もあります。

 

蘇生ができず、家族が部屋へ入室する時は衣類や環境に注意しましょう。

急変時はとにかく散らかりやすく、患者さんの衣類が乱れたり出血していることも多いので、看護師は環境整備や衣類を整えて面会できるようにすることが大切です。

 

まとめ

・急変に気付く観察が大切。おかしいと思ったらABCの評価をする

・初期対応は人手を集める事。急変対応においてBLS・ALSの理解は大前提

・急変時だからこそ記録と家族対応はしっかりと!

・報告はSBARで、具体的かつ簡潔的に行う

急変に強くなるには?それは場数を踏んでこそだと思います。

ただ漫然と回数をこなすのではなく、「どう動けばよかったのか?」「急変前に対応できなかったのか?」と考えていくのが大切だと思います。

また積極的に他病棟のエマージェンシーコールに参加するのも方法の一つです。

人が多く集まっているとなかなか参加しづらいですが、自分のできることを探して動くのも大事です。何度も急変対応をすることで急変に強くなっていくものです。