看護

人工呼吸器の看護で大切なのはモードよりアラーム対応!アラーム対応の話

人工呼吸器について勉強したいけど、何から勉強すればいいか分からない』という人は多いと思います。

筆者もICUに配属になった時は人工呼吸器の本を買って勉強しましたが、モードやモニターの見方などが理解しにくく、結局実際の現場ではあまり役に立たなかった事もありました。

確かに人工呼吸器のモードを理解してアセスメントすることは大切です。しかしそれ以上に人工呼吸器のアラーム対応について知っておく事が『急変の早期発見』につながるので大切なのです。

アラーム対応が大切な理由

人工呼吸器は呼吸の補助を行っており、患者さんの生命を維持する為に必要な機械です。

人工呼吸器で緊急事態が起こると患者さんの生命が危険に晒されます。それだけに人工呼吸器の管理はプレッシャーがかかります。

しかし人工呼吸器のアラームを理解し、緊急事態に対応できれば患者さんの生命に危険が及ぶことが無くなります。逆に人工呼吸器の管理をするにあたってトラブルの対処ができないという事は、患者さんの生命が危険に晒されている状態になるとも言えます。

アラームなどのトラブル対応ができれば人工呼吸器の管理において不安はほとんど無くなります。つまり人工呼吸器の勉強は、モードよりもまずトラブルの対応方法を知っておく事が大切です。



人工呼吸器の仕組みを簡単に理解しよう

呼吸は吸気(患者さんが息を吸うこと)と呼気(患者さんが息を吐くこと)で成り立ちます。

一見複雑そうに見える人工呼吸器ですが、その役割は患者さんに酸素を投与する事であり、口から挿入された挿管チューブや気管切開のチューブと接続して酸素を投与します。

人工呼吸器の役割は吸気(患者さんに酸素を送り込む)を行うだけであり、呼気は肺の弾力や自発呼吸によって行われます。

人工呼吸器のモードは酸素を送り込む方法が変わるだけです。難しく考えずに、人工呼吸器は患者さんに対して酸素を投与することであると理解しましょう。

人工呼吸器から送られる酸素は、呼吸器回路、挿管チューブ、気管、肺という経路を流れます。この経路のどこかに異状があれば適切に酸素が投与できなくなります。

適切に酸素投与ができていない場合、人工呼吸器が異常を知らせるためにアラームが鳴ります。

看護師はアラームの意味を理解して適切に対応する必要があります。では人工呼吸器の画面の見方とアラームを紹介していきます。

人工呼吸器の画面の見方を知っておこう

①圧

人工呼吸器から患者さんへ酸素を投与する時の圧力を数値です。最高圧、平均圧、PEEPの表示があります。

最高圧はPIPとも呼ばれ、呼吸周期の中で一番高い気道内圧を表示します。

バッキング(患者さんが咳をすること)や、ファイティング(人工呼吸器と患者さんの呼吸リズムが合わない)などで気道内に圧がかかると上昇します。30cmH2O以上の圧がかかると人工呼吸器関連肺障害(VALI)のリスクが高くなります。

平均圧は呼吸周期における平均の気道内圧を表示しています。

PEEPは呼気終末陽圧の事で、呼気時に設定した圧をかけることで肺胞が虚脱(しぼんでしまうこと)することを予防します。

②呼吸数

1分間の呼吸数が表示されます。患者さんの自発呼吸だけでなく、人工呼吸器での呼吸も含めた呼吸回数です。

③酸素濃度

人工呼吸器から患者さんへ投与される酸素濃度が表示されています。

④換気量

呼吸におけるガスの量が数字で表示されます。

一回換気量、分時換気量が表示されています。

一回換気量はVTと表示され、一回の呼吸におけるガスの量が表示されています。人工呼吸器から患者さんへ送られる吸気の量はVTi、患者さんから吐き出されるガスはVTeとして表示されています。通常患者さんへ送られるガスの量と吐き出されるガスの量は同じ量になるはずです。VTiとVTeの数値に差があればリーク(空気が漏れること)の可能性があります。

分時換気量はMVと表示され、一回換気量×呼吸数(1分間)であり、一回換気量がmlに対して、分時換気量はl/分になっています。一回換気量と同様に分時換気量も呼気と吸気を表すMViとMVeがあります。

⑤波形

人工呼吸器の波形からも様々な情報を得ることが出来ます。

波形を理解しようとすると覚えることが多くなるので、まずは『回路内に痰や水滴が貯留していると波形が揺れる』という事を覚えておきましょう。



よくあるアラームと対応

人工呼吸器管理において最も大切といえるのがアラーム対応です。人工呼吸器管理中の患者さんは声に出して訴える事ができず、アラームは大切な役割を担っています。

アラームは主に

①『息が十分にできないor投与量が多すぎて吸いきれない』といった患者さんの呼吸状態によるもの。

②『気管チューブの閉塞や回路の外れ』といった回路の異常によるもの。

③『人工呼吸器本体のバッテリー不足や酸素が供給されていない』等の人工呼吸器本体の異常によるものがあります。

看護師はアラームの内容をしっかり理解して対応することが求められます。

アラームが鳴れば看護師は速やかに患者さんの元へ向かい、アラームを消音し、原因の追求と対応を行います。

気道内圧アラーム

気道内圧が高い(高圧アラーム)

原因として、バッキング(患者さんが咳をすること)やファイティング(人工呼吸器と患者さんの呼吸リズムが合わない)などで気道内に圧がかかる。回路が折れ曲がったり、水滴が貯留しているといったものです。

高い圧がかかると肺を損傷(VALI)する可能性があるので、高圧アラームの原因を除去する必要があります。

原因として多いのはバッキングです。バッキングは痰や水滴が気管に流れこんで起こる事が多いので、バッキングによってアラームが鳴っているなら、人工呼吸器の波形を確認し、波形の揺れがあるなら痰や水滴が貯留している事が分かります。

痰の貯留は吸引で解消できますが、原因が痰の貯留でなければ、患者さんは必要でないのに吸引される事になります。特に人工呼吸器を使用している患者さんは吸引によって一時的な低酸素状態になる事もあるので、『とりあえず吸引』ではなく吸引が必要かどうかをしっかりとアセスメントしましょう。

人工呼吸器の波形が揺れていれば、回路内に結露や水滴が無いかを確認し、水滴があれば除去します。また胸郭の触診で震え(ラトリング)がある、聴診で副雑音があるといった患者さんからの情報を元に吸引が必要かを判断しましょう。

ファイティングは人工呼吸器と患者さんの呼吸のリズムが合わない場合に起こります。いわゆる「呼吸器と同調していない」状態であり、頻発する場合は呼吸器の設定変更か、鎮静を深くして呼吸器と同調するようにします。

鎮静中の患者さんに対して、覚醒テストで鎮静剤を減量すると、覚醒に伴いファイティングが増加する事が多いです。ファイティングは血圧上昇、頻脈、換気量低下等も起こるため早急に対処が必要です。

気道内圧が低い(低圧アラーム)

原因としては回路のリーク(空気の漏れ)や回路の接続外れ、気管チューブが抜けている、または気管チューブが抜けかかっている等です。

一時的な気道内圧の低下の場合、患者さんの吸気努力(息を吸う力)が大きくなった場合にも作動する事があります。

回路外れの場合は回路を接続し直せばOKですが、回路の破損で空気が漏れている場合は回路の交換が必要になります。

また回路に問題が無いのに気道内圧の低下が続く場合は挿管チューブが抜けかかっている場合もあります。場合によっては再挿管となる事もあります。

呼吸回数

呼吸回数が多い(呼吸回数上昇アラーム)

アラームの設定値を超えて呼吸が行われると鳴るアラームです。

成人の呼吸数は16~18回/分ですが、人工呼吸器を装着している患者さんは様々な要因で頻呼吸となる事が多いです。

呼吸数が多くなる要因で多いのは、換気量が不足している場合です。通常1回の呼吸で500mlの換気量が必要な患者さんが、何らかの影響で250mlしか換気できない場合、患者さんは呼吸数を増やす事で必要な換気量を得ようとします。換気量が低下する原因は、人工呼吸器のサポートが足りていない、患者さんの呼吸状態の悪化、痰などで気道が閉塞しかかっている、痰による無気肺等です。

また発熱、貧血、鎮静剤の減量による興奮や呼吸器との非同調、などが原因となって呼吸数が上昇する場合があります。

頻呼吸が続けばまずはアラームを止め、聴診や視診で呼吸状態の観察を行います。

頻呼吸は患者さんの苦痛のサインである事が多いので、しっかりと原因を取り除く事が大切です。

もともと呼吸状態が悪い患者さんだと、換気量が少ないので常に頻呼吸となる場合があります。その場合はアラームの設定を見直すことも必要です。

呼吸回数が少ない(呼吸回数下限アラーム、無呼吸アラーム)

一定時間患者さんの呼吸数が低下、もしくは無呼吸が続いた場合に鳴るアラームです。

強制換気のモードでは基本的に呼吸回数が設定できるので、設定された呼吸回数を下回る事はありません。

CPAPモードのように患者さんの自発呼吸を補助するモードだと、患者さんの自発呼吸が低下した場合にアラームが鳴ります。

呼吸数低下が続く、あるいは無呼吸となってバックアップ換気となっている場合はモードの変更が必要になります。

換気量

換気量低下(分時換気量低下アラーム)

患者さんの分時換気量が低下することによって鳴るアラームです。

分時換気量は一回換気量×1分間の呼吸数なので、分時換気量が低下する原因は①一回換気量の低下、②呼吸数の低下、③換気量と呼吸数の両方の低下、の大きく3つに分類できます。

①一回換気量の低下

原因としては、肺の弾力性低下など肺の機能低下、痰の貯留による気道閉塞や無気肺、カフ漏れなどによる呼気の漏れ、呼吸筋疲労による換気量低下等が考えられます。

②呼吸数の低下

意識状態の悪化や鎮静がかかりすぎている、フェンタニルなどの薬剤による呼吸抑制、CO2貯留による呼吸抑制などが考えられます。

③両方の低下

カフ漏れや挿管チューブが抜けかかっている、呼吸状態が悪化しているが頻呼吸が行えない状態など、本来換気量が低下すると呼吸数を増やすことによって必要な分時換気量を得ようとします。

分時換気量は低下する原因が様々なので、アラームの原因を断定するのが難しいアラームでもあります。



アラームの設定値を見直すことも大切

色々なアラームの対応方法を説明しましたが、アラームはあくまで設定した数値で鳴ります。

アラームの設定が適切にされていないと患者さんの異常を見逃したり、異常がないのにアラームが鳴るという事態が発生します。

各勤務で患者さんに適したアラームの数値を見直すことも必要です。

人工呼吸器の表示だけに頼らない!自身の観察が大切

人工呼吸器で換気量低下アラームが鳴っていても、SPO2は100%で呼吸苦が無い場合もあれば、逆にアラームが鳴っていなくても徐々に呼吸数が増加していたり、換気量が低下している場合もあります。

人工呼吸器の表示画面を観察することは大切ですが、胸郭の動きや呼吸様式を視診することや呼吸音の聴診をすることも大切です。

まとめ

・人工呼吸器管理中の患者さんは声に出して訴える事ができない。アラームは患者さんの異常を知らせる大切な役割。

・人工呼吸器の看護において大切なことは、アラームを理解して適切に対処すること。

・患者さんに適したアラームの数値を見直すことも必要。

・アラームや人工呼吸器の画面だけでなく、視診や聴診などの観察も異常の早期発見には大切。