看護

クーリングは悪影響を及ぼす?ICU看護師が知っておくべき発熱と解熱療法の話

発熱すれば体温を下げるために冷やす』という事は看護師でなくても知っている事だと思います。

特に病院では発熱している患者さんも多く、氷枕によるクーリングを行なう看護師も多いと思います。

そんな普段何気なく行われているクーリングですが、実は患者さんに悪影響を及ぼす可能性がある事をご存知でしょうか?

ICUでは発熱と関わる事が多く、看護師による解熱療法が日常的に行われていると思います。この記事ではクーリングの有用性や解熱療法を、発熱のメカニズムと合わせて解説していきたいと思います。

クーリングは患者さんに悪影響を及ぼすのか?

氷枕やアイスノンによるクーリングは、解熱を目的として主に頚部や腋窩部に行われます。

しかしクーリングはあくまで外表への冷却刺激であり、皮膚温は低下するが中枢温への効果はないとされています。そしてクーリングによる寒冷刺激に対し、熱産生が亢進し、血管収縮・シバリングを引き起こす可能性があります。

つまりクーリングを行うことによって、酸素消費量は増大するが解熱効果が得られないということになります。

鎮静中の患者さんはクーリングの効果がある

上記のクーリングによるシバリングの誘発は、非鎮静下の患者さんにおいて引き起こされるとされています。

鎮静薬や筋弛緩薬はクーリングによる寒冷刺激に対するシバリングや血管収縮を抑制する為、鎮静下の患者さんでは薬物療法と同様に酸素消費量や代謝を抑制する事ができるという発表があります。

つまり鎮静中の患者さんに対しては、クーリングによる解熱効果が期待できるという事になります。

薬物による解熱療法

クーリング以外の解熱療法は、薬物による解熱療法があります。

プロスタグランジンE合成阻害薬・NSAIDS・アセトアミノフェンなどの薬物は、体温のセットポイントを低下させる為、酸素消費量や代謝を抑制する事が出来ます。

クーリングと比べて薬物による解熱は、体温のセットポイントを下げる為、熱が放出され発汗が起こることにより末梢血管抵抗が減少して血圧が低下する可能性があります。



解熱療法は何℃から行うべきか?

American College of Critical Care Medicine(ACCM)とInfectious Diseases Society of America(IDSA)という、アメリカの集中治療と感染症の学会から報告された重症患者の発熱に関するガイドラインでは、38.3℃以上を発熱と定義しています。

しかしこの38.3℃という数字は死亡率とは関与しないという発表があります。

日本集中治療医学会と韓国集中治療医学会の日韓合同の多施設研究であるFACEstudyでは、敗血症患者では体温と死亡率に有意な関係はみられなかったとしています。

また非敗血症患者においても死亡率に変化があるのは39.5℃以上の発熱であり、39.4℃以下では死亡率に有意な差はなかったとされています。

これらの研究より、解熱療法は39.5℃以上の発熱に対して効果があるとされています。しかしこれらはあくまで研究中の為、今後も検証が必要がであると言われています。

また発熱に対してすぐに解熱療法を選択するのではなく、解熱療法が必要なのかどうかをアセスメントする事が大切であるとされています。



クーリングは安楽効果を生む

これまでの内容から、クーリングによる解熱療法としての効果が薄いことが分かったと思います。

だからといってクーリングを行ってはいけないという訳ではありません。クーリングには患者さんに対する安楽効果があり、発熱時のケアとして有効である場面も多いです。

クーリングでどこを冷やす?

クーリングは頚部や鼠径部などの動脈に沿って行うと効果が高いとされています。これは動脈を冷やすことで、解熱効果を高める狙いがあるからです。

しかしクーリングを安楽効果の為に行う場合は、動脈の走行に沿って行うのではなく、患者さんが安楽と感じる部分を冷やす方が効果があるかも知れません。

例えば冷えピタのように、解熱効果ではなく、安楽効果に重点をおいてクーリングを行う方法もありだと思います。

 

まとめ

・クーリングによって解熱効果が期待できるのは鎮静中の患者さんである

・非鎮静患者さんへのクーリングは酸素消費量の増加や代謝の亢進、シバリングを誘発する可能性もある

・クーリングの実施によって予後に差はない、というか研究が少ない

・クーリングによる安楽効果はあり

普段何気なく行っている看護も、実はエビデンスが曖昧なものも多く存在します。クーリングも何気なく行っている看護師が多いですが、実は患者さんに対して悪影響を及ぼす可能性があります。

発熱があるからクーリングではなく、『何のためにクーリングを行うか』という点が重要だと思います。