看護

【PCPSの看護】経皮的心肺補助装置の観察項目やトラブル対応

PCPS(percutaneous cardiopulmonary support)とは経皮的心肺補助装置の略であり、経皮的に脱血管と送血管と呼ばれる管を挿入し、遠心ポンプの力で心臓と肺を補助する装置です。

欧米ではPCPSではなくV-A ECMOとという名称で呼ばれたりもします。PCPSを日常的に使用している施設は少なく、使用する場合は緊急で使用されます。その為夜勤帯でも対応できるように、普段からPCPSについて理解をしておく必要が求められます。

今回はICUやCCU勤務の看護師なら知っておきたい、PCPSの看護やトラブル対応について記事にしました。

PCPSの目的と適応

強心薬や血管収縮薬、IABPによる補助でも循環維持が困難な場合の補助手段

心臓手術後の人工心肺離脱困難や低拍出症候群に対して

AMI、心不全の重度の心原性ショック

CPA後の心肺蘇生の循環補助

PCPSの適応は上記を参照してください。PCPSの目的は心肺蘇生のみだけではなく、様々な病態に対して呼吸補助・循環補助を目的とします。

PCPSは決して延命治療では使用されません。侵襲的な治療の為、使用するメリットとリスクを天秤にかけて判断します。回復の見込みのない場合や終末期においては適応外となります。

 

PCPSの仕組みを知ろう

PCPSの基本構造は、脱血管(静脈へ留置)・送血管(動脈へ留置)・遠心ポンプ・人工肺・酸素ブレンダー・ポンプコンソール(制御装置)で構成されています。

脱血管→遠心ポンプ→人工肺でガス交換→送血管という流れで体外循環が行われます。

PCPSの回路はもちろんディスポ製品で、通常3~4日程度で回路交換が必要になります。もちろん回路に異常があればその度に回路交換を要します。

脱血管・送血管

脱血カニューレや送血カニューレとも呼ばれ、PCPS装置と患者さんを繋ぐ大切な役割をしています。

脱血管は主に大腿静脈から挿入され、先端は右心房付近に留置されます。右心房から血液を回収し、心肺装置によって血液は酸素化され、酸素化された血液は送血管から全身へ送られます。

PCPSは脱血した血液よりも多い血液を送ることは出来ません。循環を補助するには大量の血液を送り出す必要があるので、効率良く大量の血液を脱血する必要があります。

しかし血液中の赤血球は強い陰圧がかかると破壊されてしまい溶血してしまいます。その為脱血管の先端には多数の側孔があり、溶血を予防しながらも大量の血液を脱血出来るようになっています。

送血管は大腿動脈から挿入される事が多く、先端は大腿動脈から外腸骨動脈へ留置されます。

送血管の大きさが大きくなれば、血液を送り出す量を多くすることができます。しかしサイズが大きくなるほど足の血流が悪くなるリスクがあり、最悪の場合は足が壊死する可能性もあります。

送血管、脱血管のすぐ近くに枝のような回路がありますが、これは挿入時にエア抜きするためのものです。回路の三活が開放されると出血や空気の流入の原因になるので必ずペアンでクランプしておきます。

ミキシングゾーンについて

PCPS使用中の循環は「PCPSで酸素化した血液」と「自身の肺で酸素化された血液」が存在します。この二つの血液が交わる部分を「ミキシングゾーン」といいます。

このミキシングゾーンは自己心拍出量とPCPSの流量によって部位が変化します。

PCPSの送血に対し、自己心拍出流量が10%程度で近位弓部、25%程度で遠位弓部、50%になると腹腔動脈付近でミキシングゾーンが確認されます。

右橈骨動脈から採血したPaO2と、PCPSの送血回路から採血したPaO2の値に乖離があれば、自身の肺で酸素化された血液が右橈骨動脈へ流れていると考えられます。

しかし、両者に乖離がない場合は右橈骨動脈にはPCPSから送血された血液が流れている事を表しています。それは心拍出量が低下しているとアセスメントする事ができます。

つまり右の橈骨動脈は患者さん自身の心拍出量を評価する部位となるのです。これらの理由から、AラインやSPO2モニタは右腕で測定します。



遠心ポンプ

大腿静脈(あるいは内頚静脈)から脱血された血液は、遠心ポンプ中央部の流入ポートから流入し、回転子につられて回転します。回転した血液は外側に向かう遠心力が発生し、ポンプ外側の流出ポートから人工肺を通って大腿動脈へ送血される仕組みになっています。

災害時や停電時などで電源が供給されなくなった際には、手動で回転させることができるハンドルを使用して血流を維持する事ができます。

ポンプの回転数を設定することで循環の流量(フロー)を調整します。流量を上げるために回転数の設定を上げますが、回転数を上げたからといって必ず流量が上がるわけではありません。

流量を維持するためには回転数もそうですが、循環する血液量が少ないと流量が維持できなくなります。

人工肺

人工肺は直径0.1mm程の中空糸というガス交換用の膜の束でできています。

中空糸の内側を酸素が通り、中空糸の外側を血液が流れ、拡散によってガス交換が行われます。人工肺を長期間使用した場合は、ガス交換機能が低下し、血漿リークが生じるばあいがあります。

また人工肺と室温との温度差により結露して、人工肺の周りに水滴が付着する場合があります(ウェットラングwet lung)。ガス交換機能が低下するので、対策として人工肺周囲を温めて温度差を無くしたり、酸素流量を一時的に増やして結露を飛ばす、O2フラッシュを行ないます。

酸素ブレンダー

人工呼吸器と同じく酸素濃度(Fio2)や酸素流量を設定することができます。



PCPS使用中の観察項目

PCPS使用中は、患者さんの全身管理に加え、機器や回路の観察も重要になります。各機器や回路の観察ポイントを解説します。

PCPSは臨床工学技士が担当している施設がほとんどだと思いますが、技師さんが不在の時などに対応できるように、看護師もしっかりと理解しておく必要があります。

脱血管・送血管の観察ポイント

挿入部の観察

出血や感染徴候の有無、カニューレの固定がしっかり行なわれているかの確認をします。

大腿動脈や大腿静脈からカニューレを挿入している場合は、膝の上下でカニューラを固定します。カニューレが屈曲しないようにしっかり固定されているか確認しましょう。

カニューラ刺入部はガーゼで覆って保護します。じわじわ出血する場合が多いので、汚染があればガーゼ交換を行います。出血が多い場合は医師へ報告しましょう。

PCPS本体に目が行きがちですが、体位変換などで屈曲がないか、固定が剥がれていないかをこまめに観察しましょう。

回路の観察

回路に屈曲がないか、回路の枝はクランプされているか、三方活栓はクランプされているか、回路の損傷はないか、エアーの流入がないか、回路内に血栓が形成されていないかを観察します。

脱血管

回路の揺れ・振動の有無を観察します。回路が揺れることを「しゃくる」や「しゃくり現象」とも呼ばれ脱血不良のサインとなります。

脱血不良の場合は回路の屈曲がないか、循環血液量(ボリューム)が不足していないか、回転数が足りていないかなどの要因を考えます。循環血液量不足の場合は、輸血や輸液負荷を行ないます。

脱血管は内部が強い陰圧なので三方活栓のトラブルなどで回路が開放された場合、エアーを回路内に引き込んでしまうので注意が必要です。

送血管

脱血管と違い、送血管の血液の色は赤みがかっています。酸素化不良があると送血管に流れる血液色が、脱血管と同じように黒ずんでくるので必ず色の観察はしましょう。酸素化不良の場合は人工肺の交換などが必要になります。

送血管は強い陽圧がかかっているので、三方活栓のトラブルなどで回路が開放された場合は大出血を起こすので注意しましょう。

遠心ポンプの観察ポイント

遠心ポンプは1分間に数千回転の速度で回転しています。適切に回転しているかを確認しますが、回転数と流量は一致しません。そのため回転数のみではなく、流量も同時に観察するようにします。

流量はおよそ2.0L/min/㎡以上を目標としますが、自己心拍の程度によって変化します。

例えばCPAの蘇生に時間がかかり、心筋の機能がほとんど残っておらず、自己心拍が期待できない場合は、PCPSでしっかりと流量を確保します。この場合の流量の低下は危険なサインです。

一方CPAの蘇生が速やかに行われ、心筋の機能も比較的良好で、自己心拍が期待できる場合は、補助流量を少しずつ減らしてPCPSの離脱を目指します。このように回転数や流量は基準がなく、患者さんの状態に左右されます。その為数値だけをみるのではなく、『流量が急激に低下した』『流量が少しずつ低下している』といった様に、数値がどのように変化しているのかを観察しましょう。

人工肺の観察ポイント

遠心ポンプ同様に、血栓ができると閉塞する危険があるので、肉眼で血栓の有無を観察します。

また人工肺にあるアウトポートから水滴があれば『ウエットラング』と言って、人工肺が水分により酸素化の効率が悪くなっている状態です。ウエットラングはガス交換機能が低下するので、対策として人工肺周囲を温めて温度差を無くしたり、酸素流量を一時的に増やして結露を飛ばす、O2フラッシュを行ないます。

もしアウトポートから水分ではなく、泡立った血漿成分が付着している場合は、『血漿リーク(プラスマリーク)』といって血漿成分のせいで人工肺が目詰まりを起こしている状態です。この場合は酸素フラッシュは行なわず、人工肺の交換を検討します。

ACTの確認

ACTとは活性化凝固時間であり、血液の固まりやすさを数値で表したものです。

PCPSでは血液が回路内で固まらないように、ヘパリンを投与して血液を固まりにくくしています。しかしヘパリンが効きすぎてしまうと、出血の原因となる為、適宜ACTをモニタリングをする必要があります。

施設によって多少目標値は違うと思いますが、最近のPCPSの回路はヘパリンコーティングされているのでACTは170くらいでコントロールします。



PCPS使用中の全身管理のポイント

PCPS使用中のモニタリングや、全身状態観察のポイントを解説します。PCPS使用中の多くはスワンガンツカテーテルや、動脈圧ラインが留置されており、これらのモニタリングが必要になってきます。

また左室の後負荷軽減・冠動脈血流増加を目的とし、IABPが併用される事も多いです。つまりPCPSの観察にはスワンガンツカテーテルやIABPの理解も必要になります。

【SVO2・CI】ICU看護師が解説!スワンガンツカテーテルの看護

【IABP】大動脈バルーンパンピングの看護・観察ポイント

スワンガンツカテーテルの観察

PCPS使用中は大腿動脈から送血を行なうので、循環の逆流が起きます。その為スワンガンツカテーテルの熱希釈法で計測するCO(心拍出量)やCI(心係数)は当てになりません。

PCPS使用中はSVO2(混合静脈血酸素飽和度)が重要です。SVO2は全身の酸素供給ができているかの指標となり、低下時は酸素消費に対して供給が追いついていない状態です。

SVO2は65~70%以上を目標とします。

またPAP(肺動脈圧)は左室の前負荷の指標、つまり循環血液量(ボリューム)の指標となります。PCPS使用中は循環を維持する為に、脱血を十分に行う為必要があります。そのためPAPが低下していると循環血液量が減少していると判断できるのです。

循環動態の観察

PCPS使用中は補助循環を行なう為、本来の心循環動態とは異なります。PCPS使用中の血圧は平均血圧(MAP)が重要であり、平均血圧は60mmHg以上を目標とします。

血圧が十分に保てていないと臓器障害が引き起こされます。特に腎障害や肝障害が起こりやすい状態になっています。

動脈圧波形

PCPSは流量補助を行ないますが、心臓のポンプ機能と違って拍動がありません。その為Aラインの波形は平坦な波形となっています。

Aラインの波形によって自己心拍があるかの判断材料になるので、数値だけではなく波形も重要になります。ただしIABPが留置されていると、IABPによる拍動があるので判断出来なくなります。

呼吸状態の観察

PCPS使用中はSPO2測定が上手く行なえない場合も多いので、スワンガンツカテーテルが留置されているならSVO2を観察しましょう。SVO2は65~70%以上を目標とします。

大量輸液や心不全により肺水腫となりやすい為、呼吸音や痰の性状にも注意しましょう。

ETCO2は、自己心拍再開→肺循環再開→EtCO2上昇となるので自己心拍の目安になります

体位変換はどうする?

PCPS使用中は過鎮静状態となる場合が多く、カニューレ挿入によって体位変換も積極的に行えない事が多いです。

その為背側に無気肺を起こしやすいので、できる限り体位ドレナージを行ないます。体位変換による循環の変化も考えられるので、筆者の施設では医師と相談して行なうようにしています。

SPO2測定は右手で行なう

右上肢はPCPSの血流の影響を受けにくく、自己心拍の血流を反映しやすいので、SpO2の観察は右手で行ないます。

左手と右手で数値に違いがあれば、右手は自己心拍のSPO2だと分かります。

下肢循環障害の有無

送血管やIABPを留置しているのでとくに下肢の循環障害の有無は観察しましょう。

足背動脈と後脛骨動脈の触診を行い拍動の有無を観察します。

必ずドプラーによる聴診も行い、血行があるかを観察します。基本的には足背動脈か後脛骨動脈のどちらかが聴取できれば末梢の循環は保たれていると判断します。

両方の動脈がドプラーで聴取できない場合はバイパス処置が必要となる場合があるので必ず医師に報告しましょう。

尿の観察

脱血や送血の影響で赤血球が破壊され、溶血を起こす場合があります。ヘモグロビン尿の出現は溶血のサインとなります。尿量だけでなく性状も観察するようにしましょう。

筆者の施設では、溶血時にはハプトグロビンの静注を行います。

また尿量もこまめに観察し、尿量低下時はカテーテルの屈曲などの可能性も考慮し必ず閉塞がないかも観察しましょう。

神経学的所見

PCPS使用中は血栓症や空気塞栓による脳障害のリスクが高いです。

瞳孔や対光反射、痙攣の有無を観察しましょう。



PCPSのトラブル対応

回路内にエアーや凝血が起きた場合

この場合は直ちにペアンなどのチューブ鉗子で送血管と脱血管をクランプしてPCPSの回転数を0にして医師や技師に応援を依頼します。

回路交換が必要なのでその間は厳重な全身状態の観察を行います。

回路交換

回路交換時はPCPSのサポートが一時的になくなるので厳重な循環のモニタリングが必要となります。

医師が回路交換しているときはモニターを見れないので、看護師は術野を見るのではなくしっかりとモニターを観察します。

バイパス処置とは?

送血管を留置している末梢側の足が循環障害を起こしている場合は、送血管留置部から末梢へ向かってもう一本送血管を挿入します。

もともと留置している送血管の枝の部分と新たに留置した送血管をバイパスすることで末梢の循環障害を改善を図る処置です。

 

まとめ

・PCPSは心肺蘇生のみだけではなく、様々な病態に対して呼吸補助・循環補助を目的として使用する。

・PCPSは延命治療ではない。使用するメリットとリスクを天秤にかけ、回復の見込みのない場合においては適応外となる。

・PCPS使用中は患者さんの全身管理に加え、機器や回路の観察も重要になる。

・右手が最もPCPSの血流が反映されにくいので、SPO2や血液ガス測定を右手で行うことで、患者さん自身の心拍出を確認できる。

・ミキシングゾーンはPCPSの血流と患者さんの血流が混ざり合う場所。

PCPSはなかなか理解することが難しいですが、緊急時に必要となるのでICUやCCUナースなら知っておきたいものです。

この記事だけで理解できるものでもなく、やはり現場で実際に触れてこそ身につくものなので苦手なままにせずに学んで欲しいと思います。