看護

【IABPの看護】大動脈バルーンパンピングの看護と観察のポイント

IABP(intraaortic balloon pumping)とは『大動脈バルーンパンピング』と呼ばれる装置であり、主に大腿動脈から下行大動脈内にバルーンを留置し、バルーンの収縮と拡張によって心臓のポンプ機能を補助する方法です。

ICUやCCUでは比較的使用頻度の高い循環補助装置であり、看護師も基本的な構造は理解しておく必要があります。

今回はICUやCCUの看護師なら知っておきたいIABPの看護について記事にしました。

IABPの目的と適応

AMI後や心不全で重度の心原性ショック

強心薬や血管収縮薬でも循環維持が困難な場合の補助手段

心臓手術後の人工心肺離脱困難や低拍出症候群に対して

PCPS留置時の左心の高負荷軽減

IABPの適応は上記を参照してください。

IABPの目的は①冠動脈の血流を増加させる②心臓の仕事量を減らす③平均動脈圧を維持する、という3つがおもな目的です。

IABPは胸部動脈に留置されたバルーンを拡張・収縮することで循環補助を行ないます。心臓の拡張期にバルーンが拡張する事で冠動脈への血流が増加し、心筋への酸素供給量が増加します。また心臓の収縮期にバルーンが収縮する事で、心臓の後負荷が軽減し、心臓の酸素消費量の減少や心拍出量のUPが起こります。

IABPの禁忌

中等度以上の大動脈弁逆流症、胸腹部大動脈解離、大動脈瘤をもつ患者さんにはIABPが禁忌となります。

また高度の下肢石灰化病変をもつ患者さんは、下肢の虚血を助長する為、使用を控えるべきとされています。



IABPの仕組み

IABPは胸部の動脈内へ留置されるバルーンカテーテルと、バルーンを拡張・収縮させる駆動装置で構成されます。

バルーンカテーテルの構造は、先端にバルーンが搭載されており、カテーテル内部にはバルーンを拡張する為のヘリウムガスが通る管と、ガイドワイヤーや先端の圧を測定するセンサーが通る2重構造になっています。バルーンカテーテルの接続部分は二股になっており、一方がヘリウムガスを送る駆動装置へ接続され、もう一方は先端の圧をモニターするモニター装置へ接続されます。

IABPの留置位置

大腿動脈からシースを留置してIABPのバルーンを挿入します。バルーンの上端は左鎖骨下動脈の分岐部から約2cm程度下方に留置されます。バルーンの下端は腎動脈の上へ留置します。

バルーンの下端が腎動脈や腹腔動脈にかかっていると、臓器への血流が減少あるいは途絶してしまい、臓器障害を引き起こす可能性があります。またバルーンが心臓から離れるほど、補助効果が低下するというデメリットもあります。

バルーンが患者さんの体形よりも大きいと腹腔動脈などの閉塞リスクが高くなります。その為患者さんの身長に合わせたバルーンカテーテル選択が重要とされています。

トリガーモード

トリガーとは引き金の意味で、IABPのバルーンの収縮と拡張のタイミングを決める設定を『トリガーモード』です。

IABPは患者さんからの生体信号を感知してを作動します。生体信号は①心電図、②大動脈圧、③心臓ペーシングの3つに分けられます。

基本的には心電図でトリガーしますが、心電図にノイズが入る状況(電気メス使用や搬送時)では大動脈圧トリガーへ変更します。心静止・心房細動などでトリガー困難な場合は他、インターナルモードという一定の間隔で拡張と収縮を繰り返すモードへ変更します。

不整脈の波形だとIABPがきちんとトリガーされないことがあるので、モードを変更して対応します。心房細動はP波がうまく検出されないことがあるので「心房細動モード」や「心電図ピーク(R波)モード」を使用します。

またペースメーカー使用中でうまくトリガーできない場合は「ペースメーカーモード」で対応します。

アシスト比

IABPの補助の比率をアシスト比といいます。

心臓の拍動に合わせて毎回補助を行う場合は1:1となり、心臓の拍動の2回に1回の補助なら1:2となります。

患者さんの循環動態が改善していけば、1:1→1:2→1:4と徐々にIABPのアシスト回数を減らして抜去を目指していきます。



IABPの2大効果

IABPは心電図上のR波、あるいは大動脈の圧波形に同期させてバルーンの膨張(インフレート)収縮(デフレート)を繰り返す事で循環の補助を行います。

バルーンの収縮と拡張によって得られる効果を解説します。

ダイアストリック・オーグメンテーション(Diastolic Augmentation)

心臓の拡張期に合わせてバルーンを拡張することで、冠動脈の血流を増加すると共に平均血圧を上昇する事をダイアストリック・オーグメンテーションといいます。

心臓の拡張期開始時に合わせてバルーンを膨張させることによって、大動脈を逆流する脈を作ります(カウンターパルセーション)。その結果、冠動脈への血流が増加し心筋により多くの酸素が供給されます。

シストリック・アンローディング(Systolic Unloading)

心臓の収縮期に合わせてバルーンを収縮することで、左室の後負荷(心臓が血液を拍出する際にかかる抵抗)と心臓の酸素消費量の軽減を行なう事をシストリック・アンローディングといいます。

心臓の収縮期開始直前にバルーンを収縮させることによって、大動脈内の圧が急激に下がります。その結果心臓は容易に血液を駆出することができるようになり、心臓の後負荷を軽減して心拍出量は10~20%程度の増加を期待できます。

また心筋の酸素消費量も減少するのでダメージを受けた心臓を回復させることにも役立ちます。脳や腎臓への血流も増加します。

 

IABP使用中の観察項目

IABP使用中は、患者さんの全身管理に加え、機器の観察も重要になります。IABPの観察項目は臨床工学技士や医師だけでなく、看護師もしっかりと理解しておく必要があります。

バルーン内圧の波形

http://nursingstudy8.blog.fc2.com/blog-entry-3.html?spより引用

 

IABPのバルーン波形は上記のような波形になります。

特徴をまとめると

ダイアストリック・オーグメンテーション圧はアシストされていない収縮期圧より上昇する。

シストリック・アンローディング圧はアシストされていない拡張期圧より低下する。

という波形になります。

このバルーンの波形はIABPの管理において重要な観察ポイントです。バルーンの拡張・収縮のタイミングが不適切な場合は適切な効果が得られない為、異常の早期発見が重要です。

ヘリウムガスの残量

IABPのバルーンは反応性の良いヘリウムガスを使用しています。

ヘリウムガスの残量が無くならないように、モニターに残量が表示されているのでしっかりと観察します。

ビニールチューブの曇りと血液逆流がないか

IABPのバルーンカテーテルにリーク(漏れ)があるの場合は、アラームが鳴って自動停止しますが、微小なリークだとアラームがならないことがあります。

バルーンカテーテル内に微小なリークがあれば血液が逆流してきたり、ヘリウムガスの漏れでチューブが曇ることがあります。アラームが作動していない場合も、バルーンカテーテルは必ず目視で観察しましょう。



IABPの合併症予防と看護のポイント

患者さんの状態を観察し、異常を早期に発見する

IABP装着中の患者さんの観察ポイントは、『IABPによる循環補助効果が得られているか』です。

血圧低下や頻脈が改善しているか、尿量低下が無いか(腎血流が低下すると乏尿になる)、末梢循環が改善しているか(末梢冷感がないか)を観察します。

・血圧の低下が無いか、平均血圧が70mmHgを超えている。

・頻脈が改善しているか、不整脈は無いか。

・末梢循環が維持されているか。

・尿はしっかりと流出しているか。

末梢循環障害の有無:下肢の虚血

IABPのバルーンカテーテルが留置されていることにより、下肢の虚血が起こる可能性があります。その為IABP留置中の患者さんは、必ず下肢の循環障害が無いかを観察します。

観察ポイントとしては、足背動脈触知できるか、下肢の冷感・皮膚の色、疼痛の有無に左右差がないかを確認します。

動脈触知が弱い時はドプラーで聴取を行行なうようにしましょう。

腓骨神経麻痺の予防

下肢の動きが長時間制限されることにより、腓骨神経が圧迫されやすくなります。

特に下肢を外旋した状態が長時間続くと、腓骨頭が圧迫されてしまいます。クッションを膝下と足首において、1~2時間おきに除圧を行ないます。また下肢が外旋しないように注意します。

IABPカテーテル挿入部

IABPのモニターの観察も大切ですが、IABPバルーンカテーテルの挿入部も異常が無いかを観察しましょう。

挿入部の出血や腫脹の有無、感染兆候の有無、固定がしっかりとされているかを確認しましょう。

大動脈損傷・解離の有無

バルーンカテーテルによって、動脈壁を穿孔する可能性が考えられます。特に大動脈が蛇行していたり、動脈硬化がある場合はリスクが高くなります。

大動脈の穿孔や解離は、突然の背部痛や血圧低下となって表れます。これらの症状にも注意して観察しましょう。

血栓塞栓症の有無

挿入部の血栓形成により、下肢阻血のような症状が表れます。

また血栓が血流に流れ、腎動脈や腸間膜動脈の塞栓症の可能性もあります。腎動脈の梗塞では尿量低下や血尿、腸間膜動脈の梗塞では下血や腹痛が現れます。

電源に接続されているか

停電対応コンセントに接続されているか確認しましょう。

心電図電極の固定

剥がれの防止のために電極の上からテープを貼って固定します

体位変換後などは注意して観察しましょう。

 

まとめ

・IABPは『大動脈バルーンパンピング』と呼ばれる装置であり、心臓のポンプ機能を補助する方法。

・IABPの目的は①冠動脈の血流を増加させる、②心臓の仕事量を減らす、③平均動脈圧を維持する。

・IABPのバルーンが拡張する事で冠動脈への血流が増加し、心筋への酸素供給量が増加する。またバルーンが収縮する事で、心臓の後負荷が軽減し、心臓の酸素消費量の減少や心拍出量のUPが起こる。

・IABPの2大効果はダイアストリック・オーグメンテーションとシストリック・アンローディング。

・IABP装着中の患者さんの観察ポイントは、IABPによる循環補助効果が得られているかを観察すること。

IABPはモニタリングも大切ですが、安静が必要で侵襲的な処置ということを理解する必要があります。

患者さんの精神的なケアはもちろん、家族さんのケアも看護師の大切な役割です。

苦手な方は多いと思いますが、この記事をきっかけにIABPについて学んでいただければ幸いです。

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