看護

【術後看護】術後の鎮痛方法は?PCAや硬膜外麻酔などを解説します

術後の管理において看護師がしっかりと理解しておきたいのは鎮痛の管理ではないでしょうか。

術後の痛みといっても患者さんによって訴えは様々だと思いますが、看護師はその訴えに寄り添い対処する必要があります。術後の鎮痛について知識が無ければ患者さんに我慢をさせることも多くなり、術後の看護に苦手意識が芽生えてしまいます。

この記事では術後の看護をするなら知っておきたい鎮痛法や、痛みの評価についてまとめてみました。術後の看護を行なう看護師さんは是非参考にしてみてください。

痛みは我慢させない

「手術をしたのだから痛いのは当たり前」と言う患者さんや家族さんは結構多いです。

確かに手術をしたら痛みは出るものです、しかし痛みを我慢することによって術後の合併症のリスクがあることを看護師は理解しておきましょう。

また術後は早期離床が大切です。早期離床によって、術後肺炎や術後イレウスの発生率が低下するとの報告があります。痛みによって離床が遅れることは、術後合併症の増加の原因となります。

術後痛みの影響

痛みによって咳嗽が困難になる→排痰ができない事により無気肺や肺炎のリスクが高くなる

痛みからの血圧上昇により術後出血のリスクが高くなる

不眠、せん妄の原因となる

精神的ストレスが大きい

など様々な弊害があります。

痛みを我慢するメリットは看護師の仕事が減るくらいです。看護師は術後の患者さんに、痛みは我慢しないように声掛けをするのが大切です。



痛みのコントロール目標

術後の痛みの目標としては、『安静時の痛みは自制内に、体動時の痛みは軽度』であることを目標とし、「動くと少し痛む」という状態が一つの目安となります。

痛みの評価スケールであるNRSやVASで3以上には、痛みに対する何らかの介入が必要であるとされています。安静時に痛みがあると咳嗽が妨げられますし、体動時の痛みが強いと離床が進まないということです。

また最近の痛みの管理においては、看護師だけでなく患者さん本人にも積極的に参加してもらう方法が推奨されています。痛みにおいては看護師の観察よりも、患者さん自身の自己申告が最も信頼できる痛みの評価です。その為患者さん自身による痛みのコントロール方法である、PCAポンプを使用した痛みの管理は理にかなっているのです。

また下記で紹介する痛みの評価をしっかりと行う事で、痛みのコントロールがしやすくなります。



痛みの評価方法

適切な痛みの管理には、適切な痛みの評価スケールが必須になります。

痛みの評価においては、患者さんの表情やバイタルサインも有効ですが、最も重要なのは患者さん自身の訴えです。患者さんの痛みを数値化する事で、適切な評価を行なう事ができ、医療者同士も数値化する事で把握しやすくなります。

NRS(Numerical Rating Scale)

0が全く痛くない状態で、10が自分で想像できる最大の痛みとし、患者さんが感じている痛みを10段階で表現してもらう方法です。

評価が簡単でわかりやすいので、信頼性・妥当性が高く、臨床の場で一番用いられている評価方法です。術後の場合は安静時と体動時の二つを評価することが必要です。

患者さんの痛みが3点の場合は、NRS3やNRS3/10とカルテ記載します。

VAS(Visual Analogue Scale)

100mmの線の左を「痛みなし」右を「最大の痛み」とした場合、痛みの程度はどの辺か示してもらう方法。

筆記用具が必要であり、NRSと比べて使用されていることは少ない方法です。

VRS(Verbal Rating Scale)

「痛くない」「少し痛い」「痛い」「とても痛い」という医療者の問いから選んでもらうといった方法。

段階が少なく詳細に評価できない、質問の仕方で結果に影響が出る、といったデメリットがあるので、こちらもVAS同様にあまり使用されない方法です。

CPOT(critical-care pain observation tool)

はたちゃんの看護師メモより引用

患者さんの表情・体の動き・人工呼吸の同調性(挿管していない患者さんでは発声)・筋緊張の4つの項目からなり、それぞれのスコアをつけて評価するスケールです。

各項目を0から2点で評価し、3点以上は強い痛みと評価します。

CPOTの特徴は客観的な評価が行える事であり、意識のない患者さんでも痛みの評価が可能になっています。ICUなどでは術後に挿管されたまま帰室する場合があるので、客観的な評価方法も知っておく必要があります。

BPSという人工呼吸管理が前提の評価方法も存在しますが、CPOTは挿管・非挿管どちらの場合にも使用できるので、現在客観的な痛みの評価はCPOTが主流となっています。



術後の鎮痛の種類

硬膜外麻酔

その名の通り硬膜外腔から麻酔を行う方法です。硬膜外腔とは脊髄の包まれているクモ膜下腔と硬膜の外側にある部分あり、脊髄くも膜下麻酔(ルンバール)とは異なり、ある程度狙った部分へ局所的に鎮痛効果を発揮します。

術後は硬膜外に留置されたカテーテルから持続的に薬剤を投与することで鎮痛を行います。持続的にオピオイドや鎮痛薬を投与することで、術後の鎮痛、とくに体動時の痛みに効果が強いと言われています。

またオピオイドを局所投与することで、オピオイドの副作用である呼吸抑制や消化器系の抑制作用が少ないというメリットもあります。

デメリットとしては血腫形成や神経障害のリスクがあります。とくに抗凝固療法を行っている患者さんはリスクが高いので硬膜外麻酔を行わない場合が多いです。

また硬膜外麻酔の影響で下肢の筋力低下やしびれなども起きる場合があります。術後の看護として、硬膜外にカテーテルを留置している患者さんの下肢のしびれなどもしっかりと観察しましょう。

患者さんが痛みをコントロールするPCA

PCAとはPatient Controlled Analgesiaの略で、患者さん自身が痛みのコントロールを行う麻酔です。

PCAポンプと呼ばれるボタンのついたボトルから、局所麻酔薬やオピオイドが持続的に(時間4ml程度)注入されるのですが、痛みがあればボタンを押すことで2ml程度ボーラス投与(急速投与)される仕組みです。

患者さん自身がボタンを押すことができるのがメリットであり、薬が流れすぎないようにロックアウト時間というものが搭載されているので安全に使用できます。

痛みを感じたら、または痛くなりそうならすぐにボタンを押してもらうことで、血中濃度が維持され効果的に鎮痛が得られます。しかし患者さん自身がPCAの使用方法を理解していないと効果が薄い為、術前からPCAの操作方法を説明しておくことが必要です。

PCAとIVPCA

一般的に硬膜外カテーテルから持続的に薬剤を注入する方法をPCA(あるいはPCEA)と呼び、静脈から持続的に薬剤を投与方法をIVPCAと呼びます。

硬膜外と静脈では使用する薬剤が異なることが特徴です。硬膜外カテーテルの留置が困難な場合はIVPCAを使用します。

どちらも手術中からオピオイドの血中濃度を有効範囲まで上昇させており、持続的に投与することで有効血中濃度を維持しています。

末梢神経ブロック

エコーガイド下に局所麻酔薬で神経ブロックを行う方法です。主に手術終了後、抜管前に行うことで術後の痛みの緩和を図ります。

特に腹部の手術で行われる腹横膜面ブロック(通称TAPブロック)は、優位に術後の痛みとオピオイドの使用量を減らすという報告があります。

創部浸潤麻酔

手術の終了前に、術野で創部へ局所麻酔薬を散布、あるいは局注する方法です。

麻酔科医ではなく外科医が麻酔薬の投与を行う必要があるので、麻酔科医が外科医に浸潤麻酔をお願いする方法でもあります。

持続創部浸潤麻酔と呼ばれる、手術創部にカテーテルを留置して局所麻酔薬を持続投与する鎮痛法もあり、手技が容易で出血性合併症のリスクが低く、腸管の回復も早いといったメリットが報告されています。

今はメジャーな方法ではないですが、今後注目されている鎮痛方法です。

NSAIDsとアセトアミノフェン

両者ともにオピオイドほど鎮痛作用が強いわけではありません。開腹手術などではオピオイドのような強い作用を持つ鎮痛薬が推奨されています。

しかし近年オピオイドの副作用を軽減するために、多様性鎮痛法という考え方が注目されています。

硬膜外麻酔・創部の浸潤麻酔・末梢神経ブロック・オピオイド・非オピオイドを組み合わせて併用する方法であり、各々の薬液量を減らすことで副作用を最小限にし、かつ効果を最大限に発揮しようとする方法です。

多様性鎮痛法ではアセトアミノフェンやNSAIDsといった、オピオイド以外の鎮痛薬の投与が重要となります。

またERASという術後早期回復プロトコルにおいてもオピオイドによる腸管運動の抑制の観点から、オピオイドの使用がを最小限にすることを推奨されているので、オピオイド以外による鎮痛が重要になっています。

アセトアミノフェンは屯用投与と比べ、定期投与が優位にオピオイドの使用量を減少させたと報告があります。一方でアセトアミノフェンは過剰投与により肝障害のリスクがあるので、投与間隔は4~6時間以上空ける必要があるので注意です。

NSAIDsは胃腸障害が有名な副作用ですので、消化性潰瘍の既往のある患者さんは投与を控えアセトアミノフェンで対応する必要があります。またNSAIDsはアスピリン喘息と呼ばれる、アレルギー反応による喘息を引き起こす可能性があります。

成人の喘息患者の10%はNSAIDsにより喘息が誘発されることがあるので、喘息患者さんにはアセトアミノフェンを使用するようにしましょう。

 

まとめ

・痛みは我慢させず、積極的に鎮痛を行う。

・痛みの評価はNRSで評価するのが一般的。

・PCAは痛くなりそうor痛くなったらすぐ押してもらうことで効果が発揮される。

・硬膜外麻酔だけでなく、様々な鎮痛方法を組み合わせた多様性鎮痛法がメジャーとなってきている。