看護

ICUでよく使用される鎮痛剤の特徴や副作用のまとめ

ICUでよく使用される薬剤と言えば何をイメージしますか?昇圧剤や鎮静剤をイメージする看護師さんが多いと思いますが、ICUにおいては『鎮痛剤』も治療において重要な役割を果たしています。

一昔前までのICU管理は『患者さんを寝かせて管理』が主流であり、鎮静剤がメインで鎮痛剤はあまり重要視されていない時代でした。しかし最近では過鎮静によるデメリットがあるため、鎮静は最小限にした『鎮痛を中心とする管理』へと、ICUの管理は変化しています

しかし一口に鎮痛剤と言っても様々な種類があり、わかりにくいと思っている看護師さんも多いと思います。

この記事ではICUでよく使用される鎮痛剤についてまとめてみました。

麻薬性鎮痛薬

麻薬性鎮痛薬は『オピオイド』とも呼ばれ、比較的強い鎮痛作用を持つ薬剤です。オピオイド=麻薬ではなく、オピオイド受容体に作用する薬剤であり、『非麻薬性オピオイド』と呼ばれる鎮痛剤もあるのです。

モルヒネ

商品名:モルヒネ塩酸塩水和物、アンペック

副作用:便秘 嘔気・嘔吐 呼吸抑制

術後鎮痛やがん性疼痛に使用されます。特徴としては、フェンタニルにない激しい咳嗽に対する鎮咳作用があります。喘息患者さんには禁忌とされています。

呼吸抑制の症状が出現すれば、時には気道確保が必要となる場合もあります。硬膜外麻酔や脊椎麻酔でも使用されます。オピオイド特有の消化管抑制・嘔吐・せん妄や幻覚・呼吸抑制に注意が必要です。

フェンタニルクエン酸塩

商品名:フェンタニル

副作用:便秘 嘔気・嘔吐 呼吸抑制

モルヒネの100倍の効果あり、主に静脈投与や硬膜外投与で用いられる麻薬性鎮痛薬です。モルヒネより便秘や嘔気といった消化管抑制作用が少ないため、術後に使用される事が多いという特徴があります。

モルヒネと同じく呼吸抑制作用があるので、特に増量時には注意して観察が必要な薬剤です。作用はナロキソンで拮抗できますが、再度呼吸抑制が出現する事があるので注意が必要です。

投与中はオピオイド特有の消化管抑制・嘔吐・せん妄や幻覚・呼吸抑制を観察しましょう。

モルヒネやフェンタニルの作用はナロキソンなどの拮抗薬で効果を打ち消すことができるのですが、ナロキソンの作用が短くモルヒネの効果が長いので、完全に拮抗できない場合が多い事を覚えておきましょう。

例えば副作用である呼吸抑制の症状に対してナロキソンを投与し、呼吸抑制が改善しても、しばらくしてナロキソンの効果が消失して再度呼吸抑制が出現する可能性があることに注意が必要です。



非麻薬性鎮痛薬

『非麻薬性オピオイド』とも呼ばれる鎮痛剤剤です。麻薬性鎮痛薬のように比較的鎮痛作用は強いですが、副作用にも注意が必要です。

ブプレノルフィン塩酸塩

商品名:レペタン

副作用:呼吸抑制 眩暈 頭痛 嘔気・嘔吐

術後痛・がん性疼痛・心筋梗塞の痛み・慢性疼痛など幅広く使用できる鎮痛薬です。静脈投与・坐剤・パッチなど投与方法も豊富です。

静脈投与時はバルビタール系の薬剤(フェノバルビタールなど)と同ルートだと沈殿するので同ルートでの投与は禁止。

鎮痛効果は強いですが、呼吸抑制にも注意が必要な薬剤であることに注意です。

ペンタゾシン

商品名:ペンタジン、ソセゴン

副作用:呼吸抑制 眩暈 頭痛 嘔気・嘔吐

麻酔前の投薬や術後の鎮痛、がん性疼痛に使用される薬剤。一定の投与量で効果がそれ以上得られなくなる『天井効果を持つ鎮痛薬です。

他の非麻薬性鎮痛剤と同じく、呼吸抑制に注意が必要。また依存性(ペンタゾシン中毒)もある薬剤です。

経口投与でも効果発現が早く、副作用もすぐに出現しやすいです。投与後は注意して観察が必要。

静脈投与時はバルビタール系の薬剤(フェノバルビタールなど)と同ルートだと沈殿するので同ルートでの投与は禁止。



NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

NSAIDsエヌセイズ・非ステロイド性抗炎症薬)は、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称です。NSAIDsはアセトアミノフェンと比べて抗炎症作用が強いという特徴があるので、関節痛などに強いという特徴があります。

ICUでは鎮痛剤としてNSAIDsを併用する事で、麻薬性鎮痛剤の投与量を減らすことができ、副作用の発現を最小限にしながら鎮痛効果を得る事を目的とします。

またNSAIDsの特徴として、消化性潰瘍や消化管出血・喘息の誘発などの副作用があるので、消化性潰瘍や喘息といったハイリスクな既往歴を持つ患者さんには他の薬剤投与が推奨されます。

NSAIDSのおもな副作用

消化器障害:消化性潰瘍や消化管出血。とくにICUではストレスのかかりやすい環境でもある為、消化管からの出血には注意する必要があります。胃管を留置している患者さんなら、投与後は必ず胃管排液を観察しましょう

腎障害:慢性腎不全の患者さんには、基本的にNSAIDsの投与は控えます。また脱水状態では腎不全を誘発する可能性があるので注意が必要です。ICUでは腎機能が低下している患者さんが多いので投与前は必ず腎機能を確認するようにしましょう。

血圧低下:NSAIDsの解熱作用によって発汗に伴う血圧低下が出現する場合があります。ICUでは循環動態が不安定な患者さんが多いので、投与前後の血圧モニタリングは必須です。

喘息:NSAIDsが原因でおこる喘息をアスピリン喘息と呼び、喘息患者さんの10%はアスピリン喘息であると言われています。喘息患者さんにNSAIDsを投与すると、喘息が誘発される可能性があるので、必ず既往歴に喘息が無いか確認して投与するようにしましょう。

アスピリン

商品名:アスピリン、バファリン

基本的なNSAIDsで、関節リウマチや神経痛、腰痛に効果的です。

NSAIDsの副作用には投与による喘息発作である『アスピリン喘息』があるので、既往歴に喘息があれば注意が必要です。

また消化性潰瘍や血小板機能障害が副作用にあり、手術前や心カテ前には1週間は休薬が必要な薬剤。

インフルエンザの患者さんに投与するとライ症候群を発症する可能性があるので、インフルエンザの患者さんにはNSAIDsは禁忌です

フルルビプロフェンアキセチル

商品名:ロピオン

副作用:ショック、出血傾向、嘔気などの消化器症状

唯一の静脈投与可能なNSAIDsです。急性腎不全のリスクがあるので、腎機能障害があれば投与は禁です。

消化性潰瘍やアスピリン喘息などNSAIDsの副作用に注意して投与が必要。

静脈投与の為、効果が10~15分で出現するため副作用の出現に注意しましょう。

投与速度が速いと血圧低下を起こすことが多いので、投与後の血圧はしっかりと観察します。

ジクロフェナクナトリウム

商品名:ボルタレン

術後の鎮痛に使用しやすく、特に坐剤は『ボル坐』の名称でよく使用されています。

坐剤は35℃で溶けてしまうので必ず冷所保存が必要です。



COX-2選択的阻害薬

セレコキシブ

商品名:セレコックス

セレコキシブは分類的はNSAIDsなのですが、NSAIDsの有するCOX阻害作用に比べてCOX-2阻害作用が特に強いので『COX-2選択阻害薬』と分類されています。

NSAIDs特有の副作用を減らし、鎮痛効果・抗炎症効果を発揮します。

2007年に発表され、副作用の少なさから注目されている鎮痛薬です。

しかし投薬による血栓性の合併症のリスクがあるので、注意が必要です。脳血管や心血管系に問題があれば投与は避けましょう、とくにCABGなどの血管術後の患者さんには禁忌です。

 

非ピリン系解熱鎮痛薬

NSAIDsとは違って抗炎症作用はありませんが、NSAIDsの副作用である消化器障害、腎機能障害のリスクは低い薬剤です。

またオピオイド系鎮痛剤とも異なるので、便秘や嘔気を起こしにくく、呼吸抑制もないので比較的使用しやすい鎮痛剤と言えます。

アセトアミノフェン

商品名:アセリオ、カロナール等

小児に対して基本的に安心して投与できる鎮痛解熱薬です。

2013年に静脈注射可能な『アセリオ』が発売され、使用頻度が急上昇した薬剤です。

NSAIDsと違い、抗炎症作用は少ないので関節痛にはNSAIDsが有用なことが多いです。

アセトアミノフェンの長期投与による肝障害のリスクあるので、投与間隔は必ず4~6時間空ける必要があります。

高用量では肝障害のリスクが上昇します。筆者の施設では体重が50kg未満や高齢者の患者さんでは、1000mgバッグの半分投与にしています。



まとめ

・オピオイドは鎮痛効果が高いが副作用に注意する。副作用は便秘・嘔気嘔吐・呼吸抑制。

・オピオイドと他の薬剤を併用する事で、副作用の発現を最小限にして鎮痛を図る。

・NSAIDsは抗炎症作用を持つ鎮痛剤。消化器症状や喘息などの副作用に注意する。

・アセトアミノフェンは比較的使用しやすい鎮痛剤だが、肝障害のリスクがある為投与量や投与間隔に注意する。

鎮痛剤をオーダーするのは医師ですが、実際に投与をするのは看護師がほとんどだと思います。

頓用指示で看護師が鎮痛剤を選ぶ場面もあるので、看護師もしっかりと薬剤について知識を持つ必要があります。

投与するだけでなく、しっかりと副作用に注意して看護を行いたいですね。