看護

【心臓外科の術後管理】人工心肺使用時における開心術の流れを解説

最近では小切開心臓手術(MICS)やダビンチといわれるロボット手術が増えていますが、まだまだ主流である胸骨の正中切開アプローチによる手術の流れを記事にしました。

ICUや循環器病棟で働いていても意外に『術式がわからない』という看護師さんも多いと思います、是非この記事を参考にしてみてください。

心臓血管外科の看護は体外循環・人工心肺装置についての話ドレーン管理の記事も参照してみてください。

麻酔導入

ルート確保

病棟でルート確保しない場合は手術室で末梢ルート確保します。

Aライン留置

基本的に手術室でのAライン確保は挿管後におこなうのですが、心外の場合は麻酔導入や挿管による循環変動が考えられるので、挿管前にAラインを確保する場合もあります。

麻酔導入~挿管

通常の麻酔ではプロポフォールでの導入が多いと思いますが、心臓麻酔ではプロポフォール投与による急激な血圧低下を嫌い、ドルミカムやケタミンが使用されることも多いです。

胃管留置

胃の内容物を除去する為に使用されます。

吸引して内容物を除去する事もあります。

CVカテーテル留置~スワンガンツカテーテル留置

鎖骨下は術野に近いので内頚から挿入されます。

スワンガンツカテーテルはそのまま挿入できないので、シースイントロデューサーとよばれる外筒を留置してから挿入されます。

麻酔科医は波形を確認しながらスワンガンツカテーテルがきちんと肺動脈まで到達したことを確認し留置します。

胃管抜去

径食道心エコープローブ留置のために一旦胃管は抜去されます

TEE(経食道心エコー)プローブ留置

TEEを行わない場合もありますが、心臓手術におけるTEEは有用であり心臓手術においては欠かせない物になってきています。

麻酔科領域におけるTEEは心臓機能の画像評価や心筋虚血の判断、心臓内の空気の検出や弁置換後の残存逆流の評価などが行えます。

ACT測定

人工心肺を使用するため、全身をヘパリン化するのでヘパリン投与前のACT値を測定する必要があります。

尿道留置カテーテル挿入

もちろん膀胱温が測定できるものを使用します。

微量計測ができるバッグを好む麻酔科医もいます。

透析患者さんでバルーンカテーテルが必要ない時は直腸温測定をします。



手術開始~カニュレーション

消毒

ほぼ全身を消毒します。

CABGでは下肢から血管を採取することも考慮して足先まで消毒します。

余談ですが足を消毒する時は外回り看護師が足を持つのですが、これがすごい重いんです(笑)。

とくに大柄な男性の患者さんだとすごい重いです、そういう意味では手術室って意外と体力を使うんですよね。

胸骨正中切開

心臓手術といえば胸骨切開が特徴的ですね。

スターナムソーとよばれる電気のこぎりで胸骨を正中に切開します。

スターナムソー使用時に麻酔科医は麻酔器の換気を止めて呼吸による動きが起きない様にします。

ちなみにスターナムは胸骨、ソーはのこぎりの意味です。

以前に正中切開をしたことがある患者さんは、胸骨にワイヤーがあるのでワイヤーの除去を行う必要があるのと、胸骨への癒着が考えられるので慎重に切開を行う必要があります。

グラフト採取

CABGでは人工心肺前にグラフト(心臓につなぐ血管)の採取をします。

CABGを行わない場合はグラフト採取は行わずカニュレーション操作へと移行します。

送血管の挿入

人工心肺から血液を送るカニューレを挿入します。太さは24Fr程度です。

上行大動脈への挿入が一般的ですが、石灰化や大動脈そのものを手術する時は右腋下動脈や大腿動脈などが利用されます。

大動脈からの送血は順行性送血・大腿動脈からの送血は逆行性送血と言われます。

大動脈に事前に糸を通しておき、スピッツメスで切開後すぐに挿入します。

事前に通していた糸でしっかりと送血管を固定します。出血するので医師・看護師共に緊張する場面でもあります。

留置後は人工心肺回路と接続し、しっかりとAIR抜きします。

脱血管の挿入

上大静脈(SVC)、下大静脈(IVC)へ血液を回収する用のカニューレを挿入します。

太さは大体28Fr前後です。

基本的に2本留置するのですが、心腔内(心臓の中)を操作しない手術では、2ステージ脱血管と呼ばれる1本だけで脱血を行う場合もあります。CABGなどでは心臓を開けないので、右房から脱血すればSVCとIVCともに脱血できます。

右心房を切開する症例はもちろん2本脱血が必要になります。ちなみに挿入する順番は必ず①送血管②脱血管です。抜去する順番は①脱血管②送血管で緊急時は送る方が大事だからです。

LV(左室)ベントの挿入

左室に血液が貯留し、左室の膨張を予防する目的で右上肺静脈から左心室にむけてベントカニューレを挿入します。

ベント回路は吸引する回路で、血液の貯留やAIR抜き目的で使用されます。

心筋保護回路の挿入

心筋保護液の注入経路は3つに分けられます。
大動脈起始部へ挿入される順行性(アンテ)、冠動脈の狭窄などで順行性が適さない場合は冠静脈洞から挿入する逆行性(レトロ)、大動脈切開後に直接左右の冠動脈へ心筋保護液を注入する選択的(セレクティブ)。

心筋保護液は高濃度のカリウム液で、冷却されて冠動脈へ流れることで良好な心停止を行います。



人工心肺開始~術式ごとの手術

人工心肺開始

すべての回路の留置(カニュレーション)ができれば人工心肺を開始します。人工心肺開始をポンプオンとも言います。

人工心肺開始直後は心臓の拍出と人工心肺の血流が混在する「部分体外循環(パーシャル)」となっています。

徐々に脱血量を増やし、心臓へ戻る血液を人工心肺側へ増やしていきます。

SVC・IVCをタニケットと呼ばれるテープで完全にクランプすることで、心臓に血液が戻らないので、心臓と肺の血流が無くなることになります。

完全に人工心肺で血流を維持できれば「完全体外循環(トータル)」となります。

人工心肺中はACTを測定し、400秒以上になるように保たれています。

大動脈遮断→心停止

心臓を停止させること、心臓を直接切開する事を目的に遮断します。
大動脈遮断鉗子と呼ばれる大きな鉗子でクランプします。この鉗子は大動脈が傷つかない様に、クランプ部がラバーでガードされています。

遮断後は心筋への酸素・栄養の補給が絶たれているので、早めに心筋保護液を注入します。基本的に心筋保護液は順行性で開始しますが順行性が困難なら逆行性に注入します。

心停止中は時間を測定し、規定時間になれば心筋保護液を再度注入して心筋の保護を行います。

また代謝を下げる目的で低体温にします。人工心肺の血液の温度を下げ、体の下に敷いている温水マットを冷却します。

術式によって温度は異なります、弓部置換では脳と体の循環を分離する必要があるので、脳保護のために高度~超低体温が選択されます。

各術式の操作へ

ここから弁置換やCABGなど術式別の操作に切り替わります。



人工心肺離脱~手術終了へ

復温開始

弁置換など予定の術式が終了すれば、手術終了に向かいます。

温水マットの体温を上げ、人工心肺の血液の温度も上げていきます。

大動脈遮断解除

手術手技終了後は遮断解除します。遮断解除後は心拍動が再開します。

左室ベントやルートベント(大動脈ルートカニューレと呼ばれる、順行性心筋保護注入カニューレ)で心臓内のエア抜きを行います。

ウィーニング

心臓内エアーの除去のためベンディング(ベントによるエア抜き)を20分程度実施。

人工心肺により前負荷・後負荷をかけ心臓の動きに問題がない事を確認し、離脱となります。

人工心肺が離脱が困難となれば補助循環(IABPなど)を考慮します。

 

ペーシングワイヤー留置

術後の徐脈やブロック対策にペーシングワイヤーを留置します。

心室のみか心房・心室のペーシングが一般的かと思われます。

 

洗浄・ドレーン留置

生理食塩水で洗浄後、心嚢・縦郭・胸腔内などにドレーン留置します。

心臓の手術では洗浄生食の温度にも注意し、しっかりと温めた生食で洗浄します。

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閉創

胸骨はワイヤーで閉じます。

閉胸は心臓が圧迫され循環動態が不安定になることもあり、場合によっては開胸したまま(ガーゼで保護します)手術室を退室する場合もあります。

 

終わりに

筆者の経験によるものなので、施設によっては手順が違ったりもしますのでイメージとして捉えてもらうと幸いです。

 

なかなか手術の流れを記載している参考書も少ないので、参考になればと思います。